虹色の人類112

 

 なるほど、大膳にはこの目の前の玉虫色の人物が言っている意味が理解出来てきた。

 つまり、大膳ら第六世代人類の欠点こそが、他の人類たちとの相違の根幹であり、人類存亡の危機を救う鍵となって来たと言っているのだ。

 しかし、そんな玉虫色の男に対し、

「貴様、それが何だと言いたい? こっちが黙って聞いていれば、好き放題我々人類を嘗め腐った言い様を並び立ておって! 第六世代人類だか何だか知らんが、もうそんな御託は沢山だ! 本当に何様のつもりだと言うのだ! 貴様が五次元人だか六次元人だか何だか知らんが、上から物を申す言い様がことさら気に入らんぞ。早々に本題を言え!!」  

 大膳は、腹の底から煮えたぎる怒りを言葉にせずにいられなかった。これだけ自分たち人類の悪態を、歯に衣着せぬ言い様で晒されたのだ。玉虫色の男の言葉が余りにも正確に的を射ているだけに、それだけ胸糞が悪くなるのも当然の事なのだ。

「ふむ。それはすまなかった。事実を言われてそれほど気に障ったのなら謝る。これ、この通りだ」

「まだ言うか! こいつめ!」

 玉虫色の男は、そんな大膳を制し、慣れない仕草で頭を下げた。とは言え、どうにも彼とて大膳の複製をしたときに覚えた謝罪だけに、それほど無意識にまで落とされた仕草とまでは行かない。

「そんなに腹を立てるな、鳴子沢大膳よ。腹を立てるという行為は、どうやら言われた内容が図星に他ならないからではないか。それでは奴は倒せんぞ?」

「奴? 奴とは何だ? 誰のことだ?」

「誰のことも何のことも、今更とぼけて見せることもなかろう。奴は奴だ。貴様が一番劣等感を覚えている男の事だ。そして、腹の底から危ういと感じている奴の事だ」

「な、なんだと!? そ、それじゃあ……」

「そうだ。私は貴様と同化していたときに、貴様の心の中を全て読ませてもらった。そして、その心の中にとある拭い切れぬほどコンプレックスを抱く人物の姿があった。その人物の名は……」

「羽間正太郎……。羽間君の事か……?」

「いかにもそうだ。……貴様は、その男に前々からかなりの脅威を抱いている。そして、自分の愛娘を取られやしまいかと常に怯え続けている。いや、もう心の中では事実上取られてしまったことを悔いるばかりか、それを恨んでさえいる。実の娘を、この不毛の大地に引きずり込んでしまった事へのな」

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