虹色の人類103
拘束衣の大膳は、そう言って突き当たりの扉の前で立ち止まった時、
「貴様に見てもらいたいものがある」
と、そう言って、今までにもない神妙な面持ちでこちら側に目を向ける。
当の大膳は、そんな彼の態度に、
「これは、お前さん方お得意の
と、皮肉めいた言い様で返す。
「ああ、そうだな。しかし、これだけは貴様の本当の目で見なければならない儀式なのだ。だから、ここからは絶対に他言無用だ」
「他言無用……だと?」
大膳は非常に驚いた。何とも皮肉な話だからだ。
「貴様たち虹色の人類に、隠し事などあるものかね?」
「ああ、それはあるとも。我々とて共有生命体とは言えども、貴様らの人類のように身分の違いぐらいは存在する。だから、この先の秘密だけはいかな理由があろうとも、他の者たちには知られてはならぬのだ。それだけは心得ておいてくれ」
当の大膳は、拘束衣の大膳の表情に
きっと、この拘束衣の大膳もこれが目的でこんな場所まで連れてきたのだろう。それならば、彼自身も目の前の彼の言い分に従わなければ事の核心に触れることは出来ない。なぜなら、本物の大膳はそのためにここまでのこのこ付いて来たのだ。それが彼の本心なのだ。
(私は個人的な興味でここまでやって来たのだ。もう後戻りなど出来ない。だが、人生の大半をこやつらの探索に費やしてきたのだ……)
当の大膳は、今後自分がいかな状態になろうとも後悔はしないと覚悟を決めていた。
若かりし頃に知ってしまった身の回りに起きる謀略を調べて行くうちに、彼は深淵に巣食う陰謀と言う魔物に魅了されてしまっていたのである。
(許してくれ、小紋よ……。我が子供たちよ。どうやらこの私にとって国勢も戦乱も二の次になってしまっていたようだ。私は心の底から知りたかったのだ。この世界に巻き起こる争いごとの正体を……)
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