虹色の人類74


 ※※※


 正太郎のレーザーソードも限界に来ていた。

「くっ、もうすぐエネルギー切れかよ……」

 滴る汗を左手で拭い、彼は再びソードの持ち手を両手に構えたところで敵をギッと睨み返した。

 出力を全開にして挑めば、十五分も超えた時点で自ずとパワーも落ちてくる。この坑道内で何体の敵を切り刻んだことであろうか。それでもエナの分身たちは残り百体は下らない。

 その上、岩陰の向こう側では、烈風七型の姿をしたエナが手ぐすねを引いて待ち構えているであろう。あと残された手持ちの武器と言えば、残弾も僅かばかりの古めかしい自動拳銃一丁だけである。

「チッ、とんだ墓参りになっちまったぜ、なあアイシャ……」

 彼は、自分をかばって死んでいった彼女の面影に愚痴を吐いた。だが、流石の彼でもここまで窮地に追い込まれてしまうとは予測していなかったのだ。

 時を追うごとに、エナの分身たちの近接戦闘にも鋭さが増してきた。流石にこのままでは、エナの目論見通り見るも無残な八つ裂き人間にされてしまう。

 正太郎は、次々と襲い掛かる攻撃を何とか切っ先の短くなったレーザーソードでかわす。案の定、もうそれには殺傷能力など残っていない。彼は奥歯を噛み締め、執拗に追いかけて来る分身たちの攻撃に流されるがまま坑道の奥へ奥へと逃げ込んで行く。

 そして百メートル、二百メートルと歩みを進めると、息も絶え絶え落ち窪んだ通路の床穴を見つける。彼は反射的にそこに飛び込んで身を隠し、彼女らの大群をやっとの思いでやり過ごした。

「これはさすがにきっついな。この俺もとうとう年貢の納め時なのか……?」

 そんな弱音を吐き出した時、彼の足元に光る何かを見つけた。

 その眩く光る細い物体は、まるでトルコ石に閃光を当てたようなブルーの妖しい煌めきを醸し出している。

「な、なんだこれは……?」

 彼は言いつつ、それをかがんでひょいと手でつまみ込むと、それをまじまじと見つめ驚きの声を上げた。

「ま、まさか、これは……エクスブースト!?」

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