虹色の人類69
「ば、馬鹿な……!! エナ、お前!?」
正太郎は、思わず手にしたレーザーソードを落としそうになった。
なんと、彼の目の前には金色の髪をした美少女の姿が無数に浮かび上がったからだ。そう、お決まりのダボダボの軍服を身にまとったその姿は、間違いなくエナ・リックバルトのものである。
そのエナ・リックバルトの姿をした少女たちは、ざっと数えても百や二百は下らない。そんな彼女らが、次々と閉ざされていたゲートの奥の方から列を作り迫り出して来るのである。そして彼女らのその表情は、まるで何かこの世の物でない物に憑りつかれたように一様に虚ろな目をしていた。
「ふふふっ、どうやら驚きを隠せないようね、ショウタロウ・ハザマ。そうよ、これはみーんなあたし。あたしの分身なの。ペルゼデール様の計らいで、虹色の人類を利用して沢山のあたしを作って頂いたわ」
「な、なぜだ!? なぜこんなことを!?」
「決まっているでしょう? あなたに対抗するためよ。……ううん、それだけじゃない。これからの時代にこれが必要だからよ」
「なんだと!? なぜ、この俺に対抗するのにこんなものが必要なんだ?」
「本当に解かっていないわね、ショウタロウ・ハザマ。だってあなたに勝つ方法なんて、技術や知識だけじゃどうにもならないじゃない? そうよ、あたしにはあなたのような豊かな経験が必要なのよ。どんなに困難な状況でも乗り切って行けるだけの膨大で貴重な経験をね。それでやっとあたしという存在は完成されるのよ!」
なるほど、そこで正太郎は全てを理解した。ここに並ぶ数え切れぬほどのエナ・リックバルトの分身は、言わば彼女の経験を積むためのダミー素材なのだ。そう、彼女は、これらの複数のダミー実体にそれぞれの経験をさせることで、それを自分の物にしようとしているのである。
だが、それは生身の人間であるネイチャーでは無理な話だ。そう、彼女のようにヒューマンチューニング手術を受けたミックスという存在ならではの話なのである。
「なんとっ! 言ってみれば、ケーススタディの集中ということなんだな!? しかし……!!」
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