虹色の人類61
「まあ致し方なかったとは言え、貴様は前政府が推奨するヒューマンチューニング手術を受けた。そして、体の半分ほどが機械仕掛けのミックスとなってしまった。それだけに、その自分の目や耳や、その他の肉体から情報収集する感覚をおざなりにしてしまっていたのだろう。確かに三次元ネットワークという最高度の文明の利器は、筆舌に尽くしがたいぐらい凄まじい第六の感覚機器と言える。だが、それを使うのは人だ。貴様は、あの羽間正太郎という男に並々ならぬ劣等感を抱いておる。いや、何も言わんでいい。貴様は私だ。そのぐらいのことは私も心得ておる」
拘束衣側の大膳はそこで言葉を切ると、またため息をつき、
「しかし、なぜ奴は我々と違うのだ? なぜ奴はああも堂々と自分の信念を貫き通せるのだ? どこが我々、鳴子沢大膳という存在と違うというのだ? ふふっ、そうだ。もう答えは出ておる。なぜなら奴は、全ての道具の使い方を心得ておるからだ。貴様のように道具に遊ばれてなどおらぬからな。どうだ? 何か私に言うことなどあるかね?」
拘束衣側の大膳の言うことは
尋問側の大膳は、目の前にある目的に異様に固執しすぎる余り見失っていたのだ。自分自身の感覚によって培う経験というものを。
「も、もう一人の私よ。私は……私は一体これからどうすれ良いというのだ? 何をすれば奴を超えられるというのだ?」
尋問側の大膳は請う。
「決まっておろう。自分自身に逐一アップロードするのだ。見る物、聞く物、この世の中に起きている事象をありったけ全て。自分自身の感覚器官を通してな」
「そ、それは、この私に、奴のように冒険の旅にでも出ろということなのか!? し、しかし……、私はもう若くはない。どんなに身を粉にしたとして、奴のようにこの野蛮な世界中を飛び回ることなど不可能だ……」
「何を言う。貴様は愚か者か? ここに最高の文明の利器があるではないか。三次元ネットワークという人類史上最高度の文明の利器が!」
「…………!!」
「そうだ、三次元ネットワークというものは正にその為にある。五感の全てをリアルタイムで共有できる。それこそがこの文明の利器の最大の利点ではないか!」
拘束衣側の大膳は言うと、尋問側の大膳の目を怪しく見つめ、
「さあ、共有するのだ。
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