虹色の人類④
正太郎は簡易ミサイル砲の安全装置を切った。そして痛みをこらえながらもそれを担ぎ、全神経を四方八方に張り巡らした。
(コイツは、俺達にヴェロンを仕向けてきた連中か……!? それとも他からの追っ手なのか……!?)
懐には、彼の愛銃であるM8000クーガーも忍ばせてある。だが、この状態では連射はおろか、正確な照準射撃もままならないであろう。しかも、近接戦闘用のレーザーソードは以ての外だ。あれは彼の体さばきがあっての賜物である。こんな身動きが取れない状態では幼稚園児のお遊戯程度の意味しか持つ事はない。
未だ激しい音を立てて降りしきる豪雨は、彼の身体から生きる事に必要な体温を急速に奪ってゆく。季節は夏なのに冷たい雨だ。まるで氷水を頭から被ったように凍みるほど痛い。
彼の意識は次第に朦朧とし、やがて全ての気力でさえ奪われていった。
なぜ俺はここに居るのか? なぜ俺はこんな場所でこんなことをしているのか?
どんなに意識を保とうとしても、疲弊した体と心にこの雨である。現実との
その時である。ふらふらとした視界の中を、一人の少女の人影が横切ったのである。
(だ、誰だ……!?)
正太郎は身の危険を察知しながらも、体が全く反応しなかった。もし、ここで心臓をえぐられ、拳銃で頭を撃ち抜かれても何の抵抗も出来ない。それどころか、多分痛みすら感じないままお陀仏であろう。
しかし、その予測とは全く違う何かが彼の身体を包み込んだ。
「ショ、ショウタロウ・ハザマ……。大丈夫?」
それはどこかで聞き覚えのある声であった。どこかまだあどけなさを感じさせる生気に満ちた声。
「む……、もしかしてお前は、エナ? エナ・リックバルトか……?」
彼は聞き返すのが精一杯だった。意識が朦朧とし、瞼は半開き状態である。ゆえに、視界はぼやけて声でのみ相手を判断するしかないのだ。
「そうよ、あたしよ、ショウタロウ・ハザマ。もう、こんなになって……。今、助けを呼ぶからちょっと待って」
エナは、その小さな体で彼を抱きかかる。そして彼の懐に手を突っ込んだ。
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