虹色の人類⑤

 そしてエナはニヤリと不敵な笑みを浮かべると、

「さあ、すぐに楽にしてあげるわ、ショウタロウ・ハザマ!!」

 と言葉を投げつけて彼の愛銃をその懐から奪った。そして見るも手慣れた手さばきで安全装置を外し、銃口を彼の胸に押し付け引き金に指を乗せる。

 その一瞬である。エナの首元の辺りから青白く輝く一筋の光が突き出したのだ!!

「うぐぅ……!!」

 エナはそのまだ可愛らしい青い瞳をむき出しにして苦悶の声を上げる。その口からは間髪入れず滝のような血反吐が流れ出して来る。

 無意識にも近い行動だった。正太郎は、エナが引き金を引く直前に、腰に携帯していたレーザーソードのスイッチを全開にさせたのだ。そのソードの光は、エナの脇腹を貫通しうなじにまで達している。

「な、なぜ……?」

 エナは苦し紛れの疑問符を残しつつ、正太郎に覆いかぶさるように絶命する。

(なぜって言われてもこっちの方が解からねえぜ……。でも、何かが違う……)

 もう彼の意識の半分は現実世界にはなかった。彼はどうにも疲れ果て、そこで記憶が途切れてしまった。エナを殺してしまったことや、なぜエナがいきなり襲って来たかなど、もうどうでも良くなっていた。



 正太郎が意識を取り戻したのは、あれから二日後の事であった。

 彼は細胞隔壁再生カプセルの中に収容されていた。再生溶液で満たされた中で、彼は自らの鼓動のリズム音で意識を取り戻したのだ。

「あら、やっとお目覚めのようね、ショウタロウ・ハザマ。さすがのあなたも、今回は大分へこたれていたみたいね?」

 正太郎がまだ朧げな眼で声のする方に視線を移すと、なんとそこには金髪の見慣れた美少女の姿があった。

「……エ、エナ……。ど、どう……して……?」

 彼女は、カプセルに仰向けに収容された正太郎を覗き込むように、にこやかな笑顔を作って乗り出している。

「フフ……。ビックリしたでしょう? だってあなたに殺されたあたしが、ここにこうやっているんですものね」

 正太郎は静かにうなずいた。どんなに彼が朦朧とした意識の中であったとしても、確実にエナを返り討ちにした感覚だけはこの手の中に残っている。


 

 

 

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