緑色の⑲


 デュバラは、クリスティーナの迫力に圧倒された。確かに考えてみれば、父親を殺されて以来、彼女をここまで生きて来させた原動力はこの謎の核心にある。その気持ちは、いくら暗殺者と言えど分からない話ではない。

 その核心を知る男を目の前にして、はやる気持ちが抑えられぬというのは極自然な成り行きなのだ。

「うむ、すまなかった、クリス。では、俺達の組織で言うところの、〝奴ら〟のことから話すとしよう……」

 デュバラは、改めて客室の応接用ソファーに腰を落とすと、一旦目を閉じ、深く息を吸った。そして頭の中で言葉を整理すると、

「いわゆる……、奴らとは、我々とは違うペルゼデール様が創造されただ。そして奴らは、我々人類に宣戦布告をする予定がある。いや、必ず我々人類と戦う準備がある。――それが我々組織に代々伝わる〝奴ら〟の伝承だ……」

「な、何それ!? それ本気で言っているの!? デュバラさん、あなたいい加減私たちをおちょくるのはやめてください!!」

 クリスティーナは声を荒らげた。小紋も同様に驚きを隠せず、円らな瞳をより一層大きく見開いて口をポカンと開けたままである。

「うむ。事情を知らぬ君たちが懐疑的になるのも無理はない。突然こんな話を聞かされれば、誰だってそのような反応を示すのも当然の事であろう。だがしかし、これは明らかな事実なのだ。お伽噺や、神話にまつわるただの伝説なのではない。それが証拠に、現に我々はあの異次元世界の扉を開いてしまっているではないか」

 デュバラは冷静を装いながら、彼女らのたかぶる心を少しでも落ち着けようと努めた。誰がこんな話を信じよう? 誰がこんな劣悪な状況を予測しよう? 誰が我々人類以外の人類の存在を信じよう?

「ねえ、デュバラさん! 異次元世界の扉が開かれたからって、何だっていうの!? それとこれとは……!!」

「あるのだよ、クリス。何せ、あの世界に我々人類をいざなったのも、全ては始祖ペルゼデール様のお導きによるものだからな」

「な、何ですって!?」




 

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