緑色の⑱

「未来が……見えた、ですって?」

 クリスティーナは、半ば懐疑的な言い様で相づちを打つ。

「うむ、その言葉通りだ、クリス。過去、現在、未来の時間を表すこれからの将来のことだ」

 デュバラは言い切った。その時、相対している小紋もクリスティーナも、どこか不信感を隠せない表情のまま目を見開いてデュバラを見つめている。

「……驚くのも無理はない。いや、信じられなくとも無理はない。恥ずかしい話だが、この俺は、そこに居る鳴子沢小紋の信じられぬような力に醜い嫉妬心を抱き、到底努力などでは勝ち取れない才能とやらを、この〝珠玉の繭玉〟によって補おうとしたのだ。そして、組織の中枢部からこの繭玉を盗み出して使用した。だが……」

「だが?」

「ふむ。だが……、奇しくも自分自身がこの珠玉の繭玉を使ったことで分かってしまったことがあるのだ」

「そ、それは……?」

 クリスティーナは思わず身を乗り出した。小紋も真剣な眼差しでそれに聞き入っている。すると、

「これでは俺たち人類は、に勝てぬということだ……」

 デュバラがその言葉を言い終えた時、小紋もクリスティーナも一度きょとんとした表情で目を見合せた。

「あ、あの……デュバラさん? さっきから何度も言っているように、僕にはさっぱりあなたの言っている話の意味が伝わってこないのです。今言った〝奴ら〟って何なんですか? それにあなた達が言うように、何で僕たち人類があんな化け物のような姿になって進化を遂げなければならないのですか? 先ずはそこから話してもらわないと」

「そうよデュバラさん。あなたはずっとそれを目的として生きてきたから何でもご存じなのでしょうけど、私たちには余りにも謎の事象が多すぎる。〝奴ら〟って一体何? それに、あなた達の言う〝ペルゼデール〟って何を意味するの?」

「ふむ。なるほど……。そこから話さねばならんか。さすがの君たちもそこを聞かされておらぬとは、何とも不憫な事だな」

「勿体ぶらないで早く聞かせて! こっちだってその為に命を張って生きてきたんですからね!」

「む、むう……。そう話をくな、クリス。しかし、何だな。君は本当に気が強い女だな……」

「気が強くて結構です。私は何としてでも事の核心が知りたいの。それは、私が現在所属している国の為だとか、女王マリダ様の為だとか、そういう問題ではないの。この気持ちあなたに分かって? 小さい時にお父さんをあなた達の組織に殺されて以来、そのために人生の殆どを費やして来たのよ! その片鱗が目の前にあるのだから、私だって感情的にならずにはいられないわ!」


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