緑色の⑫
「な、なんと……!? 今何と申した!? クハド・レミイール!!」
アフワン・セネグトルは、そのしわ深い
鳴子沢小紋を独断で暗殺せしめんとするデュバラの迫力に、クハド・レミイールはそれを制止できなかった。そればかりか、黄金の円月輪が長い年月をかけて辿り着いた進化の秘術〝珠玉の繭玉〟を勝手に持ち出し、それを勢いに乗ってデュバラは使用してしまったのだ。
「申し訳ございませぬ、アフワン様。私はデュバラ同士のあの意思の力に圧され……」
「ぬう、困ったことをしてくれたものよ、なあクハド・レミイール。ただでさえ元老院の圧力が一層強まって来ているこの時勢に、我々の目的の秘術を世間に早々と知らしめてしまったのでは、な……」
「重ね重ね申し訳ございませぬ。私とて感情に任せて、あの小さき女を仕留めようとデュバラ同士と計画を練って早計に走ったのは事実。よってご報告までとは思いましたが、いかなる処分も受け入れるつもりで御座います。どうかアフワン様。いっその事、一思いにここで……」
「何を馬鹿げたこと申すか、クハド・レミイール。こうなった今、逆にそなたを失う方が我々にとっての大損失だ。こうなった要因には、これまでのそなたらへの組織内での風当たりが強かったことが挙げられる。そこは私の落ち度だ。許せ」
「は、ははっ……何を申されますか、アフワン様。そんな勿体ないお言葉を、このような私めに……」
「良いか、クハド・レミイール。ここはこの一件の全てを私に任すのだ。個別に策を講じても、悪戯に時を危うくするだけだ。もはや、その暗殺が上手く行こうが行くまいが、あの男、デュバラ・デフーは帰って来ぬだろうからな」
「ははっ……。ワタクシも同感に御座りまする」
「ならば、そなたは一度身を休め、私の指示を待つのだ。事を起こすのはそれからだ。それと……」
「それと?」
「それとな。このことは、元老院は元よりアヴェル様にも内密に、な……」
「はっ、仰せの通りに、アフワン様……」
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