緑色の⑨
「そ、そんな……」
クリスティーナは理由も分からず愕然としたが、確かにそのことには思い当たる節があった。
現在、女王の位置に君臨するマリダからも言われていた。
「クリスティーナさん。大膳様の娘である小紋様は、さすがに大膳様の血を引く方だけあって、ああ見えても強い影響力を持っています。生き物が集団として存続する場合、どんなに強い力を有していても、たった一人では無力です。そして無意味です。そのとき、集団の中で相対的に影響力を及ぼそうとする存在が必ず一定数現れます。それが小紋様や大膳様なのです。それに……」
「それに、あの羽間さんも間違いなくそうだと仰りたいのですね、陛下?」
「その通りです。わたくしは、自分自身でも自分自身が何者なのか? そしてどういう意味を持ってこの世に製作されたのかは分かりません。なにせ生まれ持っての機械人形なのですから、それは今の人類によって、人類のサポートの為に生み出されたはずなのに、どうやらそうではないような
クリスティーナはその時、
(陛下も、何らかの人為的な意図をもって生み出されたその一定数なのではないか?)
と考えることが出来た。これだけ新国家の国民に敬われ、畏敬の念をもって愛されるアンドロイドが今までの歴史上の中で現実に存在し得ただろうか?
確かに見た目だけで判断し、一時的な熱情や性欲の捌け口として愛される機械人形は数多く存在する。だが、この目の前にいるマリダ・ミル・クラルインというアンドロイド女王は、そんな前者のような軽はずみな熱情だけを相対的に分かち合う存在ではないのだ。
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