緑色の⑧
「さっぱり意味が解らないわ」
クリスティーナは歯を食いしばった。本当に目の前の
クリスティーナは昔から優秀な娘だった。学童の頃より成績は抜きん出ていて、文武両道、他の追随を許さないほどの才覚を有していた。しかし、ここに来てようやく出会えた刺客の言っている物の意味が全く伝わって来ないのだ。
彼女の目的は、父を殺したとされる組織の特定であり、その動機を知ることであった。あの黄金色に輝く円形をした金属によって彼女の両親はこの世の物でなくなった。それから血の滲み出るような努力と、偶然にも後見人として面倒を見てくれた鳴子沢大膳という人脈を利用し、ついにここまで辿り着けたのだ。
だが残念なことに、彼女はこの刺客の放つ言葉の意味がイメージとして思い浮かべられなかった。
果たして、宇宙全体の勢力争いとは何なのか? なぜ人類が鍵となるのか? なぜ人類は進化を遂げなければならないのか?
彼女が、どんなに優秀な頭脳の持ち主であったとしても、話が異次元の方向を向きすぎていて理解不可能なのである。
「女よ。貴様の父親は、おそらく我の放つ言葉の意味を理解出来た筈だ。だからこそ死なねばならぬ運命を辿ったのだ」
「う、嘘よ……、そんなの嘘よ。お父さんに分かることなら、きっと私だって理解出来るはずだわ……」
「愚かな……。どんなに貴様の頭脳が他人より秀でていたとしても、そこに横たわる小娘とは違う」
化け物……いや、珠玉の繭玉によって進化を遂げたデュバラ・デフーは、クリスティーナに憐みの視線をくれた。
「私が……? 小紋さんと違うですって?」
「
「だが、何よ?」
「だがしかし、貴様はそこの小娘のような〝目〟を持っておらぬ。〝耳〟を持っておらぬ。〝鼻〟も持っておらぬ。そして〝力〟を持っておらぬ。よって、この領域には明白に辿り着けぬ」
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