青い世界の赤い㊽
クリスティーナは、女王マリダの命によって、鳴子沢小紋の安否を窺うために、この地球に舞い戻ってきた。その矢先、彼女が危険な何者かに狙われていることを偶然知ったのだ。
しかしそれが、かの隠密暗殺組織から変貌した〝
(さすがに、今や一般人同然の小紋さんの命を狙って来るなんて、全く目的が読めないわ。しかし、もし神という存在が本当にいるのだとしたら、必然が偶然を呼んだ巡り合わせかもしれない……)
クリスティーナは思った。
小紋の父である鳴子沢大膳が中心となり掲げたペルゼデール・ネイションという新国家。この国は、かの黄金の円月輪が目指す、
『地球人類が、今後生き残るための最強進化』
という目的の最右翼を成す存在である。それは一般の人々が一切知り得ない情報であったとしても、誰もが認めざるを得ない超現実的な事実であり、今後の戦乱の種となるべき最大の事象なのだ。
(小紋さんの持っている何かが、あの組織を呼び寄せているとでもいうのかしら? でもマリダ様には悪いけれど、小紋さんの傍に付いていれば、黄金の円月輪という謎めいた組織の真の目的が見えてくるかもしれない………。これも、大膳様と同じ血が流れる因縁とでも言うべき何かなのでしょうね……)
クリスティーナは心の中でつぶやく。
それゆえに今は、彼女を絶対に傷つけるわけにはいかない。それが女王マリダの命であろうとなかろうと、今後の未来に重大に関わって来る何かであると直感が指し示しているからだ。
「どうしたんですか? クリスさん?」
小紋は、そのつぶらな瞳で問いかけてきた。素性を知らなければ、まるで子供のように純真な瞳の輝きである。
「い、いえ……、何でもありません、小紋さん。さあ、早くここから逃げましょう」
言いつつ、クリスティーナの思いは表裏一体裏腹である。確かに彼女を傷つけたくないという思いは真意であるが、鳴子沢小紋という格好の
クリスティーナは、思わず非常階段の扉の鍵を閉めた。小紋に絶対に気付かれぬよう、そ知らぬふりをして。
「小紋さん!! こっちの扉は鍵がかかっていてどうやら開かないみたいだわ! 少し戻って、上の階から廊下を伝って別の階段を見つけましょう!」
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