黒い夏の24ページ
早雲の口調は、初めはどこか弾むようであったが、次第にはにかんで言葉尻が聞き取れにくくなった。そして全てを言い終えると、彼女はしばらく黙り込んでしまった。
「あ、ありがとな……早雲」
しおらし過ぎる早雲の態度に、勇斗は返す言葉が見つからない。今の早雲は、あまりにも可愛らし過ぎる。胸が締め付けられるほどに。
以前の話になるが、どこかでセシルから耳にしたことがある。男は、弱肉強食というゲームの中で自分を見出そうとする子供染みた生き物だが、女は、とにかく優秀な子孫の遺伝子を残そうと、壮絶な戦いに励む、より現実的な生き物であるのだそうだ。だから、あのミシェル・ランドンの起こした副隊長交代劇も納得できる話なのだ、と言っていた。
どうやら早雲も、その御多分に漏れず〝人間の女性〟としての
勇斗が、事を思い出しながら納得しかけた時、
「な、なんだ!?」
突然、鍾乳洞の暗闇の中に、その身が揺らぐほどの地響きが起こった。早雲も、きゃっ、と驚きの声を上げ、勇斗に身を託しつつ寄り添って来た。
すると、二人の眼前から一筋の白い光が差し込んで来た。どうやらこの振動は、重たい石で出来た石扉が動いたときのもののようだ。その重たそうな扉は、ゆっくりと左右に開かれゆく。扉が開かれてゆくとともに、辺りは白い光で満たされてゆき、徐々に物体の正体が
勇斗も早雲も、眩しそうに眉をひそめながら、恐る恐るその物体を凝視する。すると、
「あっ、あれは……!?」
「そ、そんな……!?」
二人はそろって驚嘆の声を上げた。その目の前のシルエットに見覚えがあるからだ。
「じゅ、17号……
「わ、わたしの、わたしの体……!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます