野望の111

「兄貴、さすがにこの数相手じゃ、レールキャノンの連発は無理だよう!」

 烈太郎の言うことはもっとも至極であった。彼のモニターに映し出されたヴェロンの大群は、どうやら四方に散開しながらベルトコンベア式に攻撃を仕掛けてくると言う様相を見せている。

 つまり、一陣目に鶴翼の陣を敷いて来た意味というのが、彼らの見事なハッタリであったことが分かる。正太郎らは、まんまとそのブラフに踊らされてしまったというわけである。

「なるへそ。奴らは俺たちにレールキャノンを撃たせたっくって、あんな派手な陣形を敷いて来たわけか。まあ、考えても見ろよ、烈。俺たち単体の敵相手に、わざわざ鶴翼の陣なんて敷いて連携攻撃を想起させるなんざ、まあかなり知能的な話だな」

「う、うん……、そうだね兄貴。オイラたちの燃料には限りがあるから。ましてや、レールキャノンはかなりのエネルギーを消耗するからね。いくら肉食系植物たちが知能を持つようになったからって、そんなことまで考えるとあっては、この先が思いやられちゃうね」

 烈太郎は言いつつ、背筋がゾッとせざるを得ない。きっとこの現象の裏には、あの大型人工知能のグリゴリの影響が関与していることは間違いない。

 どこで彼は見ているのか。どんな気持ちでこの状況を伺っているのか。何を目的としてこんなことを仕掛けてくるのか。まだまだ彼には分からない事だらけである。

「いいか、烈! これから俺たちは持久戦に入らざるを得ねえ。間違いなくコイツらヴェロンは当て馬だ。もともとグリゴリの野郎だって俺たちのデータは確認済みだろうが、念には念を入れて俺たちの生の行動データをリサーチするつもりだろう」

「うん、オイラもそう思うよ、兄貴。兄貴は瞬間的に引き出しの多い人だから、きっとグリゴリのおっちゃんも過去の行動データだけでは不安なんだと思うよ。だからこんな回りくどいことをしてくるんだと思う。でも、それだけじゃないとオイラは思うんだ」

「それだけじゃねえだと?」

「うん。何だかオイラにも説明がつかないんだけど……どこか、何か、この瞬間を楽しんでるような、そんな気が……」

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