野望の112

 そんな烈太郎の意外な言葉に、ニヤリと笑みを浮かべ、

「へへっ、何だよ。テメェも言うようになったじゃねえか。その気持ちが分かるようになったってんなら、お前もようやくこっち側の生き物になったってことだ」

 言いつつ、正太郎は全速のアクセルを踏む。

「あ、兄貴……」

 烈太郎は、なんだか飛び上がりたいほど嬉しかった。確かに彼のような人工知能が、人間の仲間入りをすること自体に意味など一つもない。しかし、羽間正太郎という人物に近づきつつある事が、彼の生き甲斐になっていることも確かだった。そして、彼の生みの親である桐野博士に託された使命にも、一歩一歩近づきつつあることもまた確かなことであった。

「そんじゃまぁ烈太郎大先生のご承諾も得たことだし、ここは一丁、踏ん張りどころってえことで、頑張っちゃったりしてみますか!」

 正太郎は、烈風七型の機体が勢いに乗ったところで、両腕に装備されたレーザーソードを二本同時に全開にさせた。

「いいか烈! お前はレールキャノンを一旦仕舞い込め! そしてソニックブームキャノンに切り替えるんだ。いいか? 準備が出来たらヴェロンは手当たり次第にお前がを撃ち落せ! 俺ァ、お前が撃ち漏らした奴らをコイツでぶった切るからよ!! 分かったか?」

「アイアイサーだよ、兄貴!!」

 ヴェロンの大群は、非常に密度の濃い列を成しながら四方八方から攻めて来る。こういった場合、いくら強力なレールキャノンであっても残り三方の攻撃には無力である。それならば、消耗戦覚悟で一体一体を丁寧に撃ち落とすしか手立てはない。

「行くぞ、烈!!」

「あいよ、兄貴!!」

 いくら追い詰められた状況だとは言っても、このような無謀な吶喊とっかん攻撃を仕掛けては命がいくつあっても足りるものではない。しかし、これは長い間激しい戦場を駆け抜けてきた、息の合ったこの両名だからこそ出来る荒技だと言っても過言ではない。これは、互いに自信があるからやるのではない。やり抜けられたという経験の後ろ盾があってこそ、初めて出来ることなのだ。

「おら、烈!! 撃て撃て撃て撃て撃て、撃って撃って撃ちまくれ!!」

「やあぁぁぁっ!!」

 ヴェロンの群れに近づいた途端に、まるでいきなり闇夜に迷い込んだかのように辺りは真っ暗闇になった。空より急襲を仕掛けられて来たがため陽の光が遮られたからだ。烈太郎が迷わずソニックブームキャノンを連続発射させると、ヴェロンの巨体が闇夜を切り裂いたかのようにぶち抜かれる。だが、またそこに闇を覆うようにヴェロンが重なり体当たりを仕掛けて来る。そこを、

「そりゃ、そりゃ、とりゃあ!!」

 と、気合の入った掛け声とともに烈風七型の機体を変幻自在に回転させ、正太郎はヴェロンを次々と一刀両断に切り裂いてゆく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る