野望の110
二人の息の合った掛け声とともに、レールキャノンの弾頭が射出される。
弾頭がキャノンの砲身を離れると同時に、激しい白光、凄まじい白煙、腹の底をえぐり返されるような轟音が辺り一帯を取り巻いた。
その瞬間最高速度はマッハ7以上。音速をはるかに超えたエネルギーは空気の壁をぶち破り、鋭い閃光と共に標的へと向かう。その一瞬を目撃した者は、誰しもがまるで空間自体が歪んでしまったかのような錯覚を覚えるという。
そして、錯覚に目を疑う間もなく弾頭は炸裂し、数十本にも及ぶ釘状の小型弾頭にそのエネルギーを委ねることになる。
さらに、この小型弾頭がただモノではない。これこそが、科学の粋を結集した賜物であることは間違いないからである。
なんとこの小型弾頭は、この尋常ではない速度にして拡散補整機能が内蔵されている。つまりは、ある程度の範囲に逃げ果せようとした標的がいたとしても、その広がり方を機能装置が予測し狙い撃ちするのだ。
人間の目には、この有様を一瞬の出来事にしか捉えられない。だが、この弾頭はその一瞬の中で凄まじいほどの仕事をやってのけるのだ。
案の定、鶴翼の陣を敷いて突っ込んで来たヴェロンの群れは、瞬く間に大空の藻屑と消えた。小型弾頭の針が途轍もない勢いで彼らの胴体を貫いていったのだ。
「やったね、兄貴! でも、また後から後から同じような大群が引っ切り無しに押し寄せてくるよ。ねえ、どうする?」
なんと、烈太郎がキャッチしたモニターには、何十、何百という数のヴェロンと思しき肉食系植物の塊が捉えられている。
「ええい、やるしかねえだろ、烈。俺の体力と精神力。そしてお前の計算力と燃料が底を尽きるまでな。じゃねえと、俺たちゃ、ただ死を待つだけになっちまう。今度こそは俺のわがままに付き合ってもらえるんだろうな!?」
「あ、当たり前だよ、兄貴! もう、兄貴一人で危ない目に遭わすことなんか絶対にしないよ!」
「おう、そのテメェの言葉、とっくとこの胸に収めておくぜ」
烈太郎は過去に、昔馴染みのジェリー・アトキンスと戦いたくないが為に、正太郎一人を生身の体一つで戦いに向かわせてしまった苦い経験がある。
もし今度そんな事があれば、彼自身、戦闘マシンとして、人工知能として、何より羽間正太郎の無二の相棒として、意識プログラムに何らかの深刻な変調を来たしてしまうかもしれない。
何せ、羽間正太郎という男と様々な経験を積み重ねて行く事が、戦闘マシンたる烈太郎の大使命であるのだから。
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