「キラか…」

「報告は読ませてもらった」

「はい」

「引き続き――そうだな、これからはキラ・ルカにも注意するように」

「了解いたしました」

「退出しなさい」

「はい。失礼致します」


 全身を緊張させたまま、作法通りに上官に一礼し、部屋を後にする。

 一般的には休日とはいえ、二十四時間体勢で誰かしら人のいる兵団の、廊下は喧騒にあふれている。日中に訪れる一般人は、平日よりも、むしろ多いくらいだろう。そのために、休日こそ休めない部署もあるくらいだ。

 そのざわめきに身を潜ませようやく、一息つけた。


「キラか…」


 学生時代の落ちこぼれ。今もって、頼りない空気をまとう。しかし――第十一隊では確実に位置を得ており、注意もうながされた。

 ぼうと、胸の内に黒い炎が燃えるのを自覚した。

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