それにしては迷惑そうだぞ
スガの荷物を移動し終えるのに、三人で数度は往復した。その上、何箱かは実家に送るように管理人室に預けている。
日々鍛錬しているだけあってそのくらいの運動量ならどうということはないが、思ったよりも時間は取られてしまった。
昼時の繁盛期の過ぎた店の片隅でそれぞれ注文をすませると、フルヤが、時間にあぶられて艶光りする天井をふり
「まったくぼっちゃんは荷物持ちだな」
「二人の荷が少ないんだ」
「ルカは確かに少ないけどな。俺のが標準くらいだっての。なんでティーセットそろってる必要があるのかわからん」
「…あるものだろう?」
「ユリ?」
呑気な会話をぼんやりと聞き流していたルカは、不意に知った顔を見つけ、つい声を漏らしていた。即座に、フルヤとスガが視線をたどる。
「あの髪長い子? 知り合いか? こっち呼べよ」
「あれが恋人か?」
「――好きな人がいるとは言ったけど、付き合ってるとは言ってないよ。余計なことは言わないでくれよ」
まだ口裏合わせを頼んでいないのに、スガに妙なことを口走られては困る。ため息をこらえてそう言いながら、ルカは、首を傾げた。
施設の買出しの途中なのか、やたらと荷物を
その先にいるのは――
「ヒシカワさん?」
「今日あいつも休み…ってそうか、お前らと一緒なんだっけ。友達?」
「それにしては迷惑そうだぞ」
スガに指摘されるまでもなく、ヒシカワの整った眉間にはくっきりとしわが刻み込まれている。
入り口近くに置かれた、先に支払いを済ませる形式のパンを手にしているようだが、ユリの元へと向かう足取りは重そうだ。
鉢植えの植物と間に挟んだテーブルや人で隠れているとはいえ、ルカは、二人があまりにもまじまじと見つめているのに肝を冷やす。できれば、気付かれたくはない。
「おーいっ、ヒシカワ!」
「うわ」
思わず声が漏れた。ルカは頭を抱え込んだが、そのくらいで隠れられるわけもない。
フルヤの声で気付いたヒシカワと、ヒシカワの視線をたどったユリとがこちらを見る。ヒシカワの眉間のしわがもう一本増えた、ような気がする。
「おいルカ、移るぞ」
「いや…あからさまに歓迎されてないよ」
「それはそれ、これはこれ。ルカだって、ヤロウばっかで顔つき合わせてるよりいいだろ」
スガはさっさと移動し、ルカは、フルヤに半ば引きずって連れて行かれた。
渋々とユリとヒシカワと同じテーブルについたルカは、事情を察したのか、ユリにほのかな苦笑を向けられた。
いやこれは、やはり「お友達できてよかったね」なのか。
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