第13話

「終わった、ね…」

メルが二人に湿布や包帯を使って治療している。クリウスはコートの裏地から多くの道具を取り出して、ベレッタの導きの栞を弄っている。

「ちょっとそれ、後にしてよ」

「ああ待って、今いいアイデア出たから!あ痛!」

「怪我治してからにしてよ!」


「……何が悲しくてこんな惚気見なきゃいけないんだよ」

ベレッタは自室で溜め息をついた。

(それにしても、アレが調律か…)



「……混沌の渦に呑まれし語り部よ、我が言の葉によりて、汝の綻びを縫い止めん」

メルの詠唱と共に、カオステラーを宿した宿り木の栞から光が昇り、空でゆっくりと広がっていった。



「あああ!!痛いわ!」

「だから動かないでって!」

「……」


ガチャ

「うるさい」

恐ろしく低い声だった。


「あっ、ゴメンナサイ」

「わかった。わかったから銃口を下ろして声のトーンを上げて」


後にクリウスは、

「あれはガニマールのオッさんと同じタイプの人間だよ。デカだよ完全に」

と述べている。

「お前ら、この後どうするのか?」


「そりゃあ、次の想区に行くんだよ」

「別のカオステラーを止める為に」

別の、次の、という言葉がベレッタにはよくピンと来なかった為、そこから沈黙の霧まで説明を聞いたベレッタは、

「よし、俺も連れてってくれ!」

「はあ、今更だな」

「え、来るの!?一緒に!?」


この数秒後、ベレッタの自室にヴィランが現れ、銃製作を得意とするベレッタの隠し爆弾で部屋ごと吹き飛ばして、転がるように沈黙の霧に突っ込んだ。

そして三人の新しい旅が始まった。

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