第九話

「……貴方の運命で、殺す?」

ジャンヌはベレッタの向けた銃口が震えているのを見た。

「……村をでてから、ずっと決めていた事だ。」

「……私じゃ…ジャンヌでは、貴方を止められないんですか!?」


ベレッタは、この質問の意図を、間違えた。人の悪を裁く彼の目は、涙で潰れていた。


「ああ。は、俺を止められないし、俺は救えない」

カチッ

撃鉄が鳴り、聖女が


「もうやめて!!ベレッタ!!」


そのが叫ぶのと、引き金が引かれたのはほぼ同時だった。


残ったのは、硝煙が登る銃口と、脳天を撃ち抜かれた少女の死体だけだった。


聖女の亡骸など、どこにもなかった。


「あ…ああ…ジャルタ……」

崩れ落ちそうなベレッタを動かしたのは、衛兵の駆け付ける音だった。

「何ごとですか!?」

「…っ!はぁ!」

衛兵にハイキックを食らわし、その隙に近くの窓から飛び降りる。

「衛兵!衛兵を呼べ!魔女が処刑を待たず殺された!!」


ベレッタは、町の外れの夜の草原まで逃げた。ゆるりとした風を感じながら、泣き腫らした目でベレッタは、故郷の、オルレアンの風景を幻視した。


「待ってくれよジャルタ!泥だらけでまだ遊ぶつもりか?!」

「ベレッタもお互い様よ!それより!あの使われてない荷車でなにかしましょう!」

「「あはは!!」」


「……あはは…クッソがァァァァァァァァ!!!!!」

膝から崩れ落ち、視界が落ちた。

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