第五話

静寂に包まれた町を、ガチャガチャとした軍隊が行進している。その殿を務めるのは赤い長髪をなびかせ、杖を持つ男。ジル・ド・レである。

「しかし。ジル・ド・レ元帥、本気で司祭達を討つおつもりですか?」

側にいた兵士が問う。ジル・ド・レは怒りを孕んだ声で答える。

「当然だ。我らの運命を狂わせ、ジャンヌを殺したのもあの男に違いない。」

「ですが、司祭はジャンヌを殺した者を探しているという情報があります。」

「……っ!狂人め!絶対に許さない!!我らが聖女を殺しておきながら、目も腐ったか!」

誰よりも狂ったように怒る元帥を悲痛な目で兵士達は見ていた。

「……っ!全体!止まれ!」

軍隊が止まる。

そこには、一人の修道服を着た青年が銃を持って立ち塞がっていた。

「……何者だ。」ジル・ド・レが問いかける。


青年 、ベレッタは銃口をジル・ド・レに向けた。


「あんたが誰よりも恨むべき奴だ。」


「……貴様か」

「元帥?」

「キィイイサマカァァァ!!」

ジルは隊列を飛び出し、杖から黒い光を放った。

放たれた光をベレッタは紙一重で躱し、撃った銃弾が杖を砕いた。

「……っ!」

「その通りだ。俺が貴方の聖女を、を殺した。」

「貴様が!何故!ジャンヌを殺す必要があるのだ!?」

狂乱したジルは、武器もなくベレッタの胸倉を掴み叫んだ。兵士達は、目の前の出来事が理解できないでいる。

ジルの瞳に、濁りきったベレッタの目が映る。そして、脳天に銃口がつけられる。

「あいつは…まだ生きてた…けどやはり俺が殺した…」


「そこまでだ!!」

「「っ!!」」

突然、二人の足元に何かが爆発し、二人が吹き飛んだ。地面を転がるように吹き飛ばされたジルに対して、ベレッタは宙に浮いたところを、いくつもの手錠に絡め取られ、何処かに引っ張られて消えた。

「今のは…一体?」

兵士の一人が呟いた疑問に、誰も答えられないでいた。

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