第一話 ジャンヌ・ダルクの想区

沈黙の霧

想区と想区を隔てて広がる、霧の世界。空白の書の旅人達は、この霧の中を進み、新たな想区を目指す。


「ねえクリウス、もう三日ぐらい霧の中だよ……。」

幼さのある少女、メルが呟く。

「でもこっちにはカオステラーがいるって言ったのはメルじゃないか。」

片眼鏡の男、クリウスが言う。

二人は霧の中をはぐれないように、手を繋いで進んでる。一度霧の中ではぐれたら、いつ合流できるかわかったものではない。

「……っ!そろそろでるぞー!」

霧が晴れていった。


目の前に広がるのは、大きな町の大通りだった。人通りは不気味なほどになく、二人以外の人影は見当たらない。


「ここは、セイヨウの地域みたいだな、人は一体どこへ?」

「……っ!ねえクリウス、向こうから声が聞こえる!」

二人が向かった先には、大広場がありそこには多くの人と、巨大な焚き火、耳を塞ぎたくなるような絶叫が響いていた。

「……っ!火刑ってことは、ジャンヌ・ダルクか!!」

「でも、こんな悲鳴をあげるような人なの?!」

火刑に処される運命を持つジャンヌ・ダルク、彼女は最後に主にその身を委ねたと言われる。

すると側にいた聖職者と思しき男が吠える。

「否!違う!このものではない!誰だ!誰だ!!!」

男は咆哮をあげると、鈍い光と共に姿を変え、禍々しい姿となった。

地獄の悪魔司祭

カオステラーが、その姿を現した。


「出た!カオステラー!」

「ああ、でもだと?」


「貴様らかぁー!!」

カオステラーが首をぐるりとクリウス達に向けた。

「ひゃあ!何でいつもこっちに気づくの!」

「ならばキサマらを処刑する!!かかれぇー!!」

広場の市民達が変化し、悪魔のような見た目の悪魔兵と化した。

また、焼かれた誰が炎を纏ったまま、ゾンビのように動き出した。

クルルル…とヴィランも集まって行く。

「これ、無理じゃ…」

「……っ!逃げるぞ!」

二人は、路地裏へと逃走した。

その場の様子を近くの建物の中から眺めていた男が言った。

「……これが俺の…の運命なのか?」

ジャルタ。

そう呟いた。

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