聖騎士だった僕が闇落ちした理由

kirillovlov

ふたりの奴隷

街を歩いていると後ろから声をかけられた。


「あの、そこの騎士様。」


振り向くと一人の女性が立っていた。


目鼻立ちの整った顔、豊かな亜麻色の髪。戦士を職業にしているのか、軽装備ながらも質の良さそうな装備が、スラリと伸びた手足によく似合っていた。


「少し、お時間をいただけますか。私はヤシマ商会の従士、アヤメと申します。騎士様にご提案があり声をかけました。」


ヤシマ商会と聞いて僕は少し不穏な気持ちになった。


「私は従士を営んでおりますが、良きご主人様に巡り会えていません。騎士様の素晴らしい装備、それを軽々と扱うことのできる鍛え上げられた肉体。できることなら騎士様のような方に使われたいです。どうぞ私をお買い上げになってくださいませんか?」


僕達の国は、前の戦争でいくつかの国を滅ぼし属領にした。敗戦国の民を奴隷として接収し労働資源としたのだ。その奴隷売買で莫大な利益をあげたのがヤシマ商会。黒い噂がたえない豪商だ。つまりこの女はヤシマ商会に買われた奴隷で、アヤメという名前からしてハポン国の民ハポンスキーだろう。


やれやれ、僕も変なのに声をかけられてしまった。それにヤシマ商会と取引なんて気が乗らない。きっぱり断ろう。


そんな僕の内心など気にすることなくアヤメと名乗る女は、そっと近くに寄ってきた。


「どうでしょう、騎士様。私はあなたのような方に仕えるのを喜びとしています。」


柔らかでしっとりとした声色はどこか艶めかしく聞こえる。心がざわざわする。


「提案ありがとう。せっかくだが君を買うことはできないよ。僕はソロの冒険者で、固定のパーティを組むことはないんだ。だから従者をつけるつもりもない。他を探してくれ。」


僕はきっぱり断りその場を立ち去った。しかしアヤメは引き下がりはしなかった。再び街を歩き始めた僕の後に追いすがり、しっとりとした声で語りかけてくる。


「騎士様は奴隷の従者の使い勝手をご存知ないでしょうが、一度従えたら二度と手放せないほどですよ?私はヤシマ商会でそれは激しい訓練を受けた女奴隷です。前線で活躍した戦士様が手塩にかけて訓練されましたのでどんな過酷な戦場でもお力になれます。きっと騎士様のあらゆるご命令に耐えられるでしょう。」


「あーちょっとちょっとあのさ。僕はこう見えても聖騎士パラディンなんだ。神に仕える騎士なんだよね。奴隷を買って冒険に従わせるなんて騎士道に反するんだ。それに楽な闘い方に頼ると騎士は堕落するに決まっている。」


「それは古い考え方です。腕を磨きたいなら、粗末な闘いは奴隷の従者に任せるべきです。大物のモンスターを討ちとるために潜入するダンジョンで、どれだけ些末な戦闘に直面していることか思い出してください。騎士様がどれだけ体力や備品を消耗し、本当に闘うべきモンスターに対して万全の状態で臨めていないことか。通常のくだらない戦闘は私のような者にまかせて、騎士様はもっと高度で高潔な闘いに集中すべきではなくて?」


「いいかい?その日常的な戦闘も含めて積み重ねこそが訓練なんだよ。それに戦場では何が起きるかわからない。闘いたい相手とだけ闘っていては強くなんかなれないんだよ。」


「ではその日常的な戦闘で傷ついた体を癒やすためにもどうぞお買い上げください。傷を癒やす応急処置も手際がよく、家に連れ帰っては温かい食事も作りますの。」


「あーもうしつこいなぁ!買いたくても金がないんだ!いい加減に諦めてくれよ!」


相変わらず会話になっていないことに苛立って、僕はつい声を荒げてしまった。


「それでしたらヤシマ商会の冒険者ローンをご活用になさっては?今なら新規ご入会キャンペーンで金利が100万リンまでは4%とお安いの。借入額によって金利も優遇されるからおすすめですよ?」


なんと、ついには金貸しの話までし始めた。ほんとにこの女は奴隷なのだろうか。目的のためならあの手この手を繰り出し絶対に諦めない。まるで商人じゃないか。


ここは切り口を変え、現実をつきつけて諦めてもらうしかない。僕は彼女の剣の腕に挑発をかけてみることにした。


「そんなに冒険の役に立つというなら、腕を見せてみろ。ちょうどこの通りの突き当りに訓練場があるから手合わせしてみようじゃないか。」


こうなったら剣の腕の差を見せてやり、自分の実力では仕えるに値しないとわからせるしかない。


「かしこまりました。ではさっそく訓練場に参りましょう。」


僕はアヤメを連れて訓練場に入った。昼過ぎのこの時間はまだ混んでいなくて、決闘するのに十分な広さがあった。僕は腰に携えた剣をスラリと抜くと、アヤメに切っ先を向けて構えた。


「さぁ、かかってこい。」


「では遠慮なく。」


アヤメも剣を抜いた。腰を少しかがめめたと思った瞬間、左右に歩幅を大きく振りながら、一気に距離を縮めてきた。そして間合いに触れる否や、横薙ぎの一閃が放たれた。僕はとっさに剣を握り締め、その鋭利な一撃を受け止めた。


「ぐぅぅ!やるな!」


アヤメの軒撃は速い。矢継ぎ早に二撃目が放たれ、ぼくの頭部を容赦なく狙ってくる。僕はアヤメの剣を相殺するように剣を撃ちおろした。生じたスキを狙って鋭く突くが、アヤメは瞬時に剣で受け流し数歩遠のく。


「訓練されてたって話は嘘じゃないわけだ。なるほど。いい剣撃だ。」


「あぁ素敵な一撃ですわ。私の目に狂いはありませんでした。」


思ったよりアヤメは強い。おまけに僕の剣より彼女の剣のほうが短く軽いぶん、小回りがきく。僕の間合いを抜けて懐に入られると厄介だ。


「では二撃目。先の剣より速くなりますから・・・!」


アヤメは再び猫のように体をしならせると、左右に歩幅をふりながら突進してきた。更に速い。おまけに左右に振ってくるから初撃がどっちから来るかわからない。


「いゃぁぁぁ!」


外見とは似つかない裂帛の気合が響き、アヤメの初撃が僕の右前方から迫ってくる。僕は腰に力をためてアヤメの剣撃が最大加速に達する前に一気に突進した。アヤメの剣の軌道は速度が乗る前に体当たりでくじかれた。


よろめいたアヤメの下腹部に剣の柄を利用して渾身の一撃を放った。内臓を圧迫されたアヤメは後方に勢い良く地面に倒れた。


「ふぅ。これで決着がついた。模擬戦でこれでは僕の従者は務まらないだろう。諦めて帰ってくれ。」


それにしても良い勝負だった。それは間違いない。アヤメの体術、剣撃の速度、打ち込みの鋭さは申し分ない。フリーの冒険者パーティに参加しても火力源アタッカーとなり得る実力だ。


ところが驚いたことに彼女は何事もなかったかのようにスッと立ち上がった。僕は思わずたじろいだ。アヤメは身についた土埃を軽く払うと身だしなみを整えた。まるで僕のカウンターの一撃がダメージにすらなっていない様子だ。


「素晴らしい一撃でした。騎士様を殺しても良ければ、もっと情熱的な闘いをお見せすることもできますの。どうですか?私の実力わかってもらえたでしょうか。ぜひ、私をお買い上げくださいな。」


「いらないと言ったら絶対にいらない!もう僕につきまとわないでくれ。帰れ!どこかにいってしまえ!命令だぞ!」


「あら、そんなキツイお言葉でご命令されるとなんとしてもお役に立ちたい気持ちになります。でも残念ながら騎士様と私は主従の契約が成されていませんので、そのご命令には従えません。もっとも、お買い上げ頂き奴隷契約がお済みになれば、どんなご命令にも従わせていただきます。そんな関係に早くなりたいです。」


つきまとうアヤメの勧誘を断り続けながら、やがて僕は自宅の入り口までやって来た。


「さぁ家に着いた。もう帰ってくれ。これ以上勧誘してくるようなら、僕は君を憲兵隊に突き出さないといけなくなる。」


「わかりました。でもよくお考えになってください。私はきっと騎士様のお役に立ちますから。」


僕は家に入ると、やっと解放されたことにホッと一息着いた。本当にしつこい。


しかし、剣の腕前はたいしたものだった。従士として抱えるのもわるくないのかもしれない。そんなことを思ってみたが、すぐにブンブンと頭を振り馬鹿げた考えを捨てた、ベットに入って寝ることにした。どこか寂しく肌寒い夜だった。


翌日、僕は鍛冶屋に預けた剣を受け取りに街に向かった。鍛冶屋を出て数歩歩くと、アヤメがあらわれた。


「ご機嫌はいかがですか?今日はダンジョンに潜る予定ですか?それでしたら私と契約してお供にいかがでしょうか。」


「あいにくと今日は剣の整備に街に出ただけだ。もう僕にかまわなくていいから帰ってくれないか。」


突き放したにも関わらず、アヤメは聞こえなかったかのように僕にまとわりついてくる。


「素晴らしい剣ですね。これならドラゴンバレーダンジョンのモンスターとも渡り合えるでしょう。どうでしょう、次回の冒険では私をお買い上げになりお供に連れて行っては。私はヤシマ商会の豊富な情報からダンジョンでの立ち回りも心得ています。」


「うるさいなぁ。ドラゴンバレーにたった2人で行ったところで全滅するに決まっているだろう。」


「あぁ早くお買い上げいただいて、騎士様の手となり足となり助けになりたいです。なにしろ私はもう何度となくドラゴンバレーダンジョンに潜っていますし、奥底に眠る地竜の姿も見ています。」


決闘場で彼女の実力を見てからというものの、何が本当なのかわからなくなってきた。


それからというもの、四六時中アヤメは僕につきまとって、私を買ってくれと耳元で囁く。その声はしっとりと美しく、おまけにその姿は日に日に美しくなっていくような気がした。アヤメは次第に表情を豊かにし、僕の行く先々で心配りをするようになった。


ある時はドラゴンバレーのダンジョンパーティで気づいたらアヤメが参加していた。僕は目をむいて驚いた。アヤメはアタッカーとして役目を果たし、類まれな攻撃力で前線を切り開いた。戦士として申し分のない働きだ。


もっとも、パーティが解散するとまた僕につきまとってきた。他のメンバーから勧誘があったみたいだが、アヤメはきっぱりと断って僕につきまとう。


次第にアヤメが僕の近くにいる時間が増えていった。おまけに夜、寝る前になるとアヤメのことを思い出すようになった。


「あいつは今頃どうしているのだろう。何度も断ったのだから、いくらなんでももう諦めたに違いない。」


そんなことを考えていると、次第に不安になってきた。もし僕以外の誰かがアヤメを買っていたとしたら、もう二度とアヤメは僕の目の前に現れない。あれだけの戦闘能力と美貌だ、買い手はきっと見つかるに違いない。僕はもしかしたら、せっかくのチャンスを逃しているのかもしれない。胸の内の不安はモヤモヤと頭のほうに登ってきて、いつの間にか僕の頭をすっかり占有してしまった。


僕は居ても立ってもいられなくなり、アヤメがまだいることを確かめるために外へ出た。すると、玄関先にアヤメがいてこう言った。


「お眠りになれないのですか?退屈なのですか?私をお買上げになれば、そのようなお悩みもなくなります。夜戦の訓練にもおつきあいできます。」


月夜に浮かび上がる白い肌と豊かな黒髪の肢体に思わず見とれ、今すぐにでもアヤメを抱きしめて家に招きいれたい。そんなことを考えたが、いつもの調子のアヤメの言葉を聞くと、そんな背徳的なことはできないと思い直してしまう。


「今日はもう遅いんだ。君は家に帰りなよ。」


アヤメを見送ると、僕は酒に手をだした。不安な時に酒を飲むと、些細なことのように思える。いくら腕が立って美貌の女戦士とはいえ、あんな色情魔みたいなのを買うやつがいるだろうか。と、自分で自分を言い聞かせるように酒を飲んで寝る。


しかし、朝起きて飲みすぎた頭痛がおさまってくると、とたんに不安になってくる。アヤメはまだ買われていないだろうか。そのうち僕に見切りをつけて、他の客を探しに行くんじゃないだろうか。そうしたら二度と会えなくなるのではないか。いや、むしろこれだけ彼女を無視したんだ。見込みのない客に愛想を尽かせて、僕が呼びかけても無視をして通り過ぎていったら。妄想につかれては酒で紛らわす生活の繰り返しで、僕の頭はおかしくなった。


ある日、自宅のドアをノックする音がして扉を開けると、アヤメが立っていた。雨の中、傘もささずにうつむいた顔をしている。いつものアヤメと様子が違う。


「騎士様、今日はお別れを告げに参りました。」


「お別れ?どういうことだい?」


僕は密かに日々怯えていたことがまさに現実になったことを悟り、膝から崩れ落ちそうになった。


「ヤシマ商会との取り決めで、この町に営業するのは30日間と決まっていました。そしてきのうが最終日でした。30日たっても買い手がつかず、といっても営業をかけたのは騎士様お一人でしたが。」


「そんな、30日だって?」


「はい、そして私は今日ここを出て、別の街に行くことになりました。買って頂けなくて大変残念ですが、騎士様とお話するのはとても楽しかったです。いつぞやの決闘場の一戦は忘れられない思い出となりましょう。さようなら騎士様。お体に気をつけて、くれぐれも冒険で命を落とさないように。」


そうしてアヤメは雨の中を静かに去っていった。


なんだこれは、これもアヤメの、いや、ヤシマ商会のやり口なんじゃないか?30日だなんて初めて聞いたぞ。そもそも2日くらい前にはアヤメは何の気もなく、笑顔で僕に自分を売りつけてきたじゃないか。


それが、きのうで終わり?今日でお別れ?どういうことだ。だまされるものか。それにあのうっとおしいアヤメがいなくなってせいせいするだろう。これで不眠症にも酒浸りからも解放させるぞ。


僕は気が狂わんばかりの熱狂にかられて、大きな声でアヤメに向かって叫んだ。


「アヤメ!僕がお前を買い上げる。ずっと面倒を見てやるから家に入ってくれ!」


「まぁ、騎士様!うれしいですわ!本当によくご決心されました!」


僕はアヤメを心から抱きしめ家に招きいれた。


アヤメは家に入ると、テキパキと奴隷の契約書を用意してくれて、僕はその書類にサインした。


「こちらがヤシマ商会の奴隷購入の申込書になります。こことここにサインしてください。金利は新規ご入会キャンペーンを適用し固定金利で4%となります。」


アヤメの指示通り、銀行に行ってヤシマ紹介へのローンの借り入れを済ませた。これでアヤメは自分のものだ。さて何から命令しようか。


「アヤメ、ドラゴンバレーダンジョンに潜ろう、あの狩場は強力なモンスターがいるぞ。」


「それは素敵です。でも残念、私は装備を何ももっていません」


「どうしてだい?決闘場でもっていた装備はどうした?」


「あれはヤシマ商会の支給品です。私はこの体ひとつであなたに買われました。この体以外に何ももっていないのです」


そんな言い方をされると何か気の毒に思える。


「では僕の装備を譲るよ。」


「それはできません。私には固有の装備があります。なんでしたらヤシマ商会から装備を買い上げていただくと助かるのです」


「そうなのか?まだお金がかかるのか。」


「初期投資だと思ってかまいません。装備が揃った暁にはドラゴンバレーダンジョンですぐに元手がとりかえせます。さぁ、こちらの武器防具ローンにご契約ください」


たしかに体ひとつでは何もできない。僕はアヤメに言われるまま、武器防具のローンを組んだ。既に借入金は500万リンになっていた。感覚が麻痺してくる。


装備が整うと僕らはダンジョンに入った。アヤメの戦闘能力はずば抜けていて、普通のパーティが8人で挑むダンジョンに、僕らはたった2人で挑めた。得られる宝も貴重品ばかりだった。


冒険の後に疲れを癒やす。アヤメは風呂を用意してくれる。その後ぼくは彼女を誘ってみた。僕はアヤメを抱いた。ものすごく抱き心地が良い女で、ぼくは今まで得たこともない快楽を得た。


戦闘のたびにモンスターが強くなり、そのたびに武器防具を強くした。また、アヤメとともに過ごす夜はめくるめく世界


気づけば僕は強くなっていた。アヤメが揃えてくる武器防具は確かなもので、戦闘で素晴らしい成果をあげられる。おまけにダンジョンに湧いてくる雑魚モンスターはアヤメが一掃してくれるので、僕はほんとうに経験になるモンスターとだけ全力で闘えるようになった。おかげで、驚くほど短期間で実力をあげることができた。


その代わり、アヤメが次々に仕入れてくる武器防具のローンで膨大な借金が膨れ上がった。おまけに僕とアヤメ、ふたりぶんの装備だからお金も2倍かかる。


「なぁアヤメ、たしかに装備は豊かになったし、僕はすごく強くなったけど、この借金はさすがに返せないよ。教会から請ける仕事ではお金が返せない。」


「わかりました。おまかせください。ヤシマ商会からの案件をお流しします。ただ、非合法の案件が多いため、騎士様にもそれ相応の準備をお願いします。まず装備一式ですが、今よりハイグレードの・・・」


僕はアヤメと離れることがもはやできなくなっていた。日中は効率が良くハイリターンなダンジョン攻略、夜はおいしい食事と心地よい時間、寝室ではめくるめくアヤメの肉体を貪り、それが終われば安らかな眠り。この生活が維持できるなら、アヤメのもちかけてくる願いはどんなものでも聞いてしまう。


銀行も僕の冒険者ローンが飛ぶと困るので、ヤシマ商会を通じてちょっと表には出せない黒い案件をもってきた。要するに暗殺、強盗、破壊工作、密輸とかそういった類の案件だ。


しかし、そんな仕事が教会にバレてぼくはパラディンを除名された。


途方に暮れているとアヤメが転職をすすめてくれた。


「騎士様のキャリアを活かして更に稼ぐなら暗黒騎士がおすすめです。ただ聖騎士とは方向性が異なるジョブチェンジになりますのでそれなりの資金が必要です。」


「暗黒騎士か・・・ちょっと想像がつかないジョブだなぁ。お金だけじゃなくて転職するための条件もあるんだろう?」


「そうですね、資金の面はヤシマ商会と相談して新しいビジネスに着手してみてはどうでしょうか。このまま冒険で得られる資金だとローンの支払も少々厳しくなりますし。転職するためのクエストをこなしながら、多くの資金を得られる方法がありますのよ。」


「なるほど、どんな案件だい?」


アヤメが提案した案件は、冒険初心者の狩場を襲撃して、彼らから金品を強奪することだ。新規の冒険者が減少傾向にある中、急増するモンスター被害に対応するため、新たに冒険者になる者には王宮からそれ相応の資金や装備を渡されるキャンペーンが行われている。


その初心者を狩って彼らが抱えた資金や装備を巻き上げるのは効率的で金になる。更に、狩場には自警団気取りの中級冒険者がやってきて僕らを討伐に来るので、彼らを殺して武器を奪うとかなりの金額で市場で売れる。売ったお金で金利を返しつつ、ローンを組み替えたついでに新しい武器も手に入れる。おまけに暗黒騎士への転職条件として、冒険者への一方的な攻撃による殺害人数30名とあった。


僕もアヤメもどんどん装備が豊かになり、その武器で闘うことで高い戦闘レベルを維持することができた。気づけば、僕ら2人組は札付きの強盗団として名を馳せていた。もちろん、この戦闘レベルを維持するためにヤシマ商会を通じて銀行から借りたローンは膨大な金額に膨れ上がっていた。僕は金利を支払うために、ひたすら冒険に明け暮れた。


ある日、僕はアヤメにふと聞いた。


「なぜ君は奴隷になったんだい?」


アヤメは答えた


「あら、騎士様こそお金の奴隷じゃないですか。」

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