第2話

○○○

 私は手始めに、ソレ(今後、私の目前にある存在をこう言い表そう)の外見的特徴について整理していこうと思う。まず“性別”は?先に述べたように“わからない”としか言いようがない。“おおよその年齢”は?“わからない”のだ。それなら“体格”は?これも“わからない”としか言いようがないのである。しつこいようだが、ソレは私の目の前に確かに存在している。しかし、ソレについての特徴や性質などの一切が“わからない”のである。

わからない。わからない。わからない。わからない。“何”もわからない。確かに“わかる”のは、ヒトのようなソレが存在しているということ、ただ一点のみである……。

 オギャオギャ。先ほどまで観察していた家族連れの一人、乳飲み子が何を求めているのか大声で泣きわめき始めた。その子の母親は、他の乗客へと申し訳なさそうな面持ちで赤子をあやし始めた。その赤子の兄であろう少年も、母親と一緒になって赤子をあやし始めた。その息子の行動をほほ笑む父親が、私の前の座席に座っていた。

「パパは僕のことをあやしてくれないの?」

目の前の男が私へ語りかける。

「ママとニイニは僕に構ってくれてるのに、なぜパパは黙って座っているの?」

目の前の男が私へ語りかける。

「パパは本当のパパなの?」

目の前の私が私へ語り掛ける。

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