第2話
○○○
私は手始めに、ソレ(今後、私の目前にある存在をこう言い表そう)の外見的特徴について整理していこうと思う。まず“性別”は?先に述べたように“わからない”としか言いようがない。“おおよその年齢”は?“わからない”のだ。それなら“体格”は?これも“わからない”としか言いようがないのである。しつこいようだが、ソレは私の目の前に確かに存在している。しかし、ソレについての特徴や性質などの一切が“わからない”のである。
わからない。わからない。わからない。わからない。“何”もわからない。確かに“わかる”のは、ヒトのようなソレが存在しているということ、ただ一点のみである……。
オギャオギャ。先ほどまで観察していた家族連れの一人、乳飲み子が何を求めているのか大声で泣きわめき始めた。その子の母親は、他の乗客へと申し訳なさそうな面持ちで赤子をあやし始めた。その赤子の兄であろう少年も、母親と一緒になって赤子をあやし始めた。その息子の行動をほほ笑む父親が、私の前の座席に座っていた。
「パパは僕のことをあやしてくれないの?」
目の前の男が私へ語りかける。
「ママとニイニは僕に構ってくれてるのに、なぜパパは黙って座っているの?」
目の前の男が私へ語りかける。
「パパは本当のパパなの?」
目の前の私が私へ語り掛ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます