めちゃかわいーじゃん

「そーゆーことか」

 納得。


「えーっと、オレ、あんまよく分かんねー。なんでユーロと元が出てくんの?」

 菊池はユーロや元の話が出てきたとこに釈然としない様子。


「ユーロ圏さ、ドルんなったじゃん」

「うん」

「それって、ヨーロッパの銀行をアメリカが助けることと引き換えだったじゃん」

「そーだったよーな」


「でも、ヨーロッパの銀行が危機に陥ったのは、アメリカの機関が多額の賠償金を請求したから」

「ふーん」


 菊池の反応が今一つ。

 黙って聞いていたフラウが口を開いた。


「うーんとね、防衛隊海軍の人達はこんな風に話してるけどね、どっちがどう悪いとかそーゆーことじゃないの。世界の流れなの。そう思った方がいいよ。大和もお友達も日本人だから、日本からの見方をすると思うけどね、大きな時代の流れのたった一つのポイントにいるだけって考えて。でないと全体が見えないよ」


 フラウの言うことはオレにとって難しかった。ただ、菊池には理解できたみたいで、菊池は痣のある顔でぶんぶんと頷いていた。分かるのか?


「よーするに、気にすんなってことだろ?」

 うまくまとめやがったぜ。大雑把すぎるぞ、菊池。


「フラウ、横須賀ベース、見に来てたんだな。広かっただろ?」

「知ってた。歴史のインプット事項だもん」

「知ってるのに見に来たんだ? かわいーじゃん」


 菊池がくすくす笑う。そんな大人っぽい笑い方して、フラウの前で無駄に色気を振りまくな。しかも「かわいー」とか気軽に言うんじゃねーよ!


「しょうがないでしょ。だって、小日向りんってグラマーで、童顔だけど大人で、気になったんだから」

「は? フラウって、まさかのこひたんファン?」


 ぼかっ


 オレの言葉を聞くや否や、菊池がオレを殴りやがった。


「ごめんね。こいつ、BAKAだから。代わりに殴っておいたよ」

 菊池め。誰がBAKAだって?


「ありがと」


 フラウが真っ赤な顔で菊池にお礼。なに、その赤い顔。フラウの時代は美男美女ばっかだから免疫があるんじゃなかったのか? 近くで話しかけられたからって、コイツはきちくきくちだぞ。


 フッ


 そのままフラウは消えた。


「何オレのこと睨んでるんだよ。大和」

「キク、お前の色気は時空を超えるんだな」

「は?」

「フラウが赤くなってた」

「はー。BAKA。なんで赤くなったか察してやれよ」

「?」


「かわいーじゃん。大和が『会いたい』って言ったから会いに来たんだろ?」

「忘れろ」


「大和が他の女の子と会うのが気になって見に来たんだろ?」

「は?」

「小日向りん」

「え?」


「そーゆーこと」

「そーなの?」

「それをオレが指摘したから赤くなったの」


 きゅん


 やべぇ。今、心臓が変になった。めっちゃかわいーじゃん。

 へー。それって、フラウもオレのこと好きかもってこと? そーゆーことだよな。この菊池先生が言うんだもんな。

 もうその夜は幸せ過ぎて。ぐっすり。

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