【第9話】絶対彼女作らせるガール!2 前夜


【2巻予告!】


 ――僕は、本当に困っていた。


「それでは来月の学園祭、ミスターコンのクラス代表は、亀丸かめまる大地だいちさんに決定とします」


『練習彼女』騒動後、僕と白星しらほしさんがイチャイチャする姿が学校中で大きな話題になり、僕に不釣り合いな称号が与えられてしまったんだ。

 曰く、女神を射止めた稀代のイケメン。曰く、女神を落とした影の実力者。

 もちろんその後には(笑)や(怒)などがつくんだけど……。


『そんな最強イケメンをミスターコンに出さないわけにいかんだろ(笑)(笑)(怒)(怒)(怒)(怒)』


 そんなノリで、学園祭の華、ミス・ミスターコンのクラス代表に、僕が選ばれてしまったんだ!


「えへへ、亀丸くんがクラスの代表♪」「大丈夫だよ! 亀丸くんは格好いいもの!」「うんうん! 格好いい!」「亀丸くんは格好いいのになあ……」「亀丸くんは、格好いい」


 相変わらず女神スイッチの解けない白星さん。

 ミスターコンに選ばれて落ち込んでいる僕を励ましてくれたりもするんだけど……やっぱりミスターコン出場なんて不安しかなくて。


「あたしがダメ丸を鍛えるわ。演技も含めてね」

「というか、あたしもミスコンのクラス代表なんだから」

「代表同士のペア演技もあるし、あんたに足を引っ張られるわけにいかないのっ!」


 そこに立ちあがったのはファッションのスペシャリスト、猪熊いのくまさん。

 ミスコンの順位は、個人と男女ペア演技の合計点で決められるため、自分の獲得点が下がらないように、パートナー役の僕を鍛えてくれることに。


 さらに現れたのが――転校生。


「お、チビ熊じゃん。元気?」

「チビ熊ぁー、ふつーに話そうよー、身長も器も小さくてどーすんだよぉ」

「――勝負しない? あたしとチビ熊、ミスコンの順位が上だった方が『何でも一つだけ命令できる』って事で」


 派手な茶髪に、恐ろしく手足の長い最凶スタイル。

 猪熊さんの天敵。有名ファッション誌『エイト』専属モデル筆頭。

 その名は――蛇乃目じゃのめ杏南あんな


 しかも、なぜか僕にいきなり好感度100%で!?


「名前なんていうの!? 亀丸? それじゃあ亀っちで!」

「あたしあたし、妹ばっかり五人いて! 面倒見るのは好きなんだけど弟ほしいなーってずっと思ってて! なんか一目見て理想の弟っぽい感じでやばいって思って!」

「弟っぽいのに他人とかやばいなって! これ100パーエッチ案件だなって!」


 そしてもう一人。

 雨の日に出会ったのは――蛇乃目さんとは正反対の、おとなしい女の子。


「1年A組、鶴姫つるひめ愛梨あいりです……」

「クラスでは、その、モノに例えたら雑巾とか」

「でも、私、なんだか知らないけど無理やりミスコンの代表に選ばれちゃって……」


 その女の子、鶴姫さんを前にして、猪熊さんは言ったんだ。


「立ち向かいなさい。――あたしが、一緒に戦うから」」


 宿命のライバル・蛇乃目さんとの対決、そして後輩の鶴姫さんを鍛えるため、猪熊邸でのミスコン合宿が始まった!


「もうなに!? なんでダメ丸は運動中なのに絵馬の胸を見て発情してるの!? 筋肉をパンプアップさせなきゃいけないのになんで股間をパンパンにさせてるの!?」

「か、亀丸くん。やっぱり……練習でも、エッチな事しなきゃだめなのかなあ……?」

「どう? 貴方あなた、女の子を壁ドンできるくらいに格好良くなった? 『ひゃん』だなんて女の子みたいな声を上げているようでは、絶望的だと思うのだけど」


 最初は和気あいあいとした雰囲気。

 ところが――なぜか雲行きが怪しくなって。


「そう、あきらめない……結局、世の中は残酷よ、努力して変わらなきゃ馬鹿にされるだけ。だから諦めない。あの子にも諦めさせたくない。血反吐を吐いたって、変わろうとしなければ今みたいに泥水をすするだけ。それがどれだけ辛いか分かってるから言ってるの。だから諦めちゃ駄目って、絶対に教えてあげないと――」


「私は、嫌い……この顔も、この顔を笑う人間も、こんな顔が可愛いっていい加減な嘘をつく人間も、みんな――嫌い!」


 様々な思惑が絡み合って、結局、僕は何もできない。

 ちょっと成長したって、僕は僕のまま。

 だけど、僕はもう一人じゃなかったんだ。


「ふふ、つまり『女の子のほめ方』を教えろ、というのね。なるほど状況は理解したわ。まずは――正座」

「テメーに教えてやるよ! 『本物の壁ドン』ってやつをなあ!」

「――大丈夫。亀丸くんは、格好いい」


      ○


 美とは! 愛とは! 恋とは!

 絶対彼女作らせるガール!2

 2/24発売予定!

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