【第5話】からかい上手の鷹見さん(極悪)
さっそくだけど、僕は踏まれていた。
モール広場にはさんさんと陽光が降り注ぎ、噴水の水しぶきをはらんだ爽やかな風が吹いている。
最高の天気に恵まれた休日だった。
なのに僕は広場の地面に正座の上、頭を足置きにされている。
「さて……遅刻の言い訳を聞かせてもらいましょうか」
「電車が遅れたのと……その、あとは寝坊してギリギリに追い込まひぎい!」
踏み直してきた足の主は、脚を組んで広場中央のベンチに座っている。
今日は、いつも
ほくろ一つない生脚は怖いくらいに白くて、なんというか黒ストという鞘を抜いた刀みたいにも見えた。
というか、この踏まれた体勢で黒ストなしだと、脚というか太ももの裏というか、普通に直でパンツ見えてるんだけどなあ……!
「遅れるなら遅れるでいいのよ。突然デートに誘ったのは私なのだし」
やっと足を下ろしてくれた。
長い黒髪と白ワンピースが鮮やかなコントラストを作っている。吸い込まれそうな光を放つ瞳がこちらを見つめている。
僕の前に立つのは、恋愛小説家で会話のスペシャリスト、学園祭ミスコン一位の圧倒的美人、そして、いつも僕の頭を足置きにして踏んでくる大悪魔――
「ただ、遅れるにしても連絡くらいはくれてもいいと思うの」
「でも……僕、鷹見さんのLINE知らないし」
昨日、金曜日の放課後の事だった。本当に、すれ違いざまだったんだ。
『――明日午前10時、モールの噴水広場に集合、時間厳守』
一方的にそれだけ言われて、今に至る。
何があるのか聞き返そうにも、鷹見さんの携帯番号もメッセのIDも知らない。
本当に来るのかどうか、単なる悪戯ではないのか、白星さん経由のメッセで訊こうかとも思ったけど、僕自身もモールの書店に注文しておいた本を取りに行ったり、レンタルショップにDVDや漫画を返したりでいろいろ用事があったので、とりあえずそのまま待ち合わせの場所に向かう事にしたのだった。
「そういえば連絡先を教えていなかったわ。それならIDを交換しましょうか」
「あ、うん。ありがと」
二人でIDを交換する。
最近は僕の友人リストもけっこう増えてきたな。まあ……まだ十人もいないけど。
「ふふ、ただし、私のIDを手に入れたからといって、必要以上にメッセを送ってこないように」
「そりゃあ……用がある時だけにするけど」
「ふふ、容易に想像できるわ。優しくIDを教えてもらったがゆえに舞い上がって、朝のおはようからお休みまで逐一自分の状況をメッセしてくる
「ぐ、ぐぐ……またまた僕を何だと思ってるんだ!?」
「ただ……そのくらい私に入れ込んでくれたほうが都合が良いのを忘れていたわ。今日のデートの目的がそうなのだし」
で、デート?
そういえばさっき『突然デートに誘ったのは私なのだし』って言ってた気もするな。聞き流しちゃったけど。
「ふふ、本日の主旨は――
頼んでもいないのに、また始まった。
いつも通り、悪魔契約の押し売りが始まったよ!
「ふふ、
女神スイッチ。
そんな白星さんの女神スイッチは、僕に彼女ができるまで解除される事はない。
そこで白星さんを神とあがめる狂信者の鷹見さんが「身代わりに彼女になる」と言い出したのだ。
『キスだけならいつでもさせてあげる』
『そのかわり、私の足置きとして放課後を過ごすこと』
こんな極端すぎる飴とムチみたいな悪魔契約で、迫ってくるようになったんだ!
「今日はいつもより彼女っぽくイチャイチャするわ。私が彼女になったらどんなにいい事かと、思い知らせてあげるためにね」
「べ、別にいいって! そ、それが用なら僕、帰るけど……!」
言ってみる。僕としては、確認のためとりあえず待ち合わせの場所に来ただけであって、悪魔契約がらみなら付き合う理由はない。
「あら? 本当に帰るの?」
「そ、そりゃあ……鷹見さんの用件を聞きに来ただけだし……」
「それは嘘ね。今回もデートの確認をするだけならば、貴方がメッセのIDを知る絵馬経由で訊くという方法もあった。その労力を割かなかったということは……貴方もたまたまモールに用事があったということでしょう? そして、その膨らんだバッグよ。私に会うだけならば、そんな大きな荷物を持ってくる必要はない。……レンタルショップへの返却? さらにレンタルショップのバッグで返却するでなく、自前のバッグに包んで持ってくるという事は、返却後にも何かを入れて持ち運ぶつもりだった。それが本か雑貨かは分からないけど、この後にモールで買い物をする予定でもあった。……こんな感じかしら?」
全部当ててきた。どこの名探偵だ怖すぎる。鷹見さんってプロの恋愛小説家のはずだったけど、ミステリーも書いてたりするのかな!?
「会話の基本は観察よ。この程度のことが私に出来ないとでも思った?」
鷹見エレナ、僕に会話の基本を教えてくれた女の子。
そういえば意外にも僕と鷹見さんの二人きりで会話をしたことはなかった気もする。ただまあ直接向かい合うと、ここまで
「さ、デートしましょ。あとは誘った手前、昼ごはんくらいはおごってあげる。お寿司でもフレンチでも、好きなものを言ってくれて構わないわ」
「べ、別におごらなくてもいいって!」
「そう、それじゃあとりあえず行きましょ? まずは貴方の用事に付き合ってあげる」
言われて無理やり手をつながれた。仕方ない、とため息をついて、とりあえずレンタルショップに向かうため歩き出すことにする。
…………んん? ちょっと待った。
いつの間にか普通にデートすることが決定してしまったような空気だぞ?
「ドア イン ザ フェイス。最初の大きな要求をあえて断らせ、相手の返報性を利用し、二の太刀である小さな要求を通す心理技術。まあ、会話の本質とはなんら関係のない些細な技術の一つなのだけど……拍子抜けするくらい簡単に流されるのね」
「…………」
ああ、してやられた。してやられちゃったよ! 昼ごはんのおごりを断わった時点で、もう鷹見さんのペースに引きずり込まれてたよ!
どうやってもう一度断ろうか迷ったけど、こうも連続でやり込められると断るのも面倒くさくなる。
それに、いつもの悪魔契約を迫る行動の一環とはいえ、鷹見さんを実際そのまま追い返すのは抵抗があるし(その心理も十分に利用されてる可能性があるけど)、とりあえず僕の用事についてきてもらう事にした。
「ふふ、早く行きましょ」
悪戯っぽく微笑む黒髪の悪魔と、隣りあって歩く。
それでさっそくだけど……鷹見さん、当然のように手をつないできてるな。しかも腕を絡めるようにして。
『――
あの宣言通り、徹底的にやる気みたいだ。
ただ……こういうふうにされるとなんだかんだ緊張はするんだ。
鷹見さんはミスコン一位の美人だし、さらさらの黒髪とか、真っ白な肌とか、林檎みたいな甘い匂いとか、正直、女の子として魅力を感じないわけではない。
それに、道行く男という男が振り返る感じなんだな。みんな鷹見さんを見てる。
「どう? 私を隣に連れている気分は? 優越感に浸れていい気分でしょう?」
「そ、そんな事は……!」
「そうね、まずは今日一日、私の肩に手を回しながら胸を揉む権利をあげる。思う存分、周りに見せびらかせばいいと思うの。俺はこんなに良い女を毎晩自由にしてるんだぜゲヘへ、と周囲にアピールするために」
「それどんな汚い悪人かな!?」
「いいわ、私のほうでも、貴方に完全征服された上に調教済みだとでもいうように『あ、だめ……』と殊勝な態度で胸を揉まれてあげる」
鷹見さんは間違いなく魅力的な女の子なんだけど、発言や性格が残念すぎるんだ!
「さ、それよりデートを続けましょ?」
そうやって僕たちはモール周辺を回った。
レンタルショップで返却したあと、新しいDVDを探す。
「エッチなDVDを借りるのでしょう? いいわ、貴方の性癖をつぶさに観察してあげる」
「借りない……!」
書店で本を買う。
「私の書いた本を買うということね。いいわ、この書店の在庫を買い占めるように」
「買わない……!」
どこに行っても鷹見さんはろくなことを言わない。
それに……イチャイチャ行動も宣言通りに徹底してくる。
DVDを選ぶ間、ずっと腕を絡ませて胸を押し付けてくるのなんて序の口で、本を見ていたら背中から抱きついてきたり、耳に吐息をかけてきたり、べたべたくっつきながら、いちいち僕の反応を楽しむような微笑みを向けてくる。
さすがに邪魔過ぎたので、視線を合わせないようにそっぽを向いて不機嫌を装ってみても……。
「ねえ
棚の本を眺めていたら、肩をとんとん。
今度はなんだと振り向くと――至近距離に黒い瞳。
いきなり、ちゅ、と軽いキスをされてしまった。
「な…………!?」
不意打ち過ぎて言葉が出ない。鷹見さんもくすくすと笑っているだけだった。
鷹見さんの悪魔契約の内容の一つ、かりそめの彼女になる代わりとして『キスだけならいつでもさせてあげる』。
この条件が有言実行の本物であると証明するため、鷹見さんは事あるごとにキスをしてくるんだ。ただ今のキスは……いつもの舌をねじ込むようなキスよりよっぽど照れた気がしたぞ……?
本当に、鷹見さんは
「お取り寄せした本も合わせて、~千円になります」
書店のレジで会計を済ませていたら、いつの間にか鷹見さんがいなくなっていた。
辺りを見回していると携帯が鳴った。さっき交換したばかりのメッセに新着だ。
『隣の服売り場』
のぞきに行くと、試着室のカーテンから顔だけ出した鷹見さんがいた。
……やけに楽しそうに微笑んでいる。嫌な予感しかしない。
「ふふ、どう? 夏の水着を選んでたの(バサー)」
「は!? ちょ、た、鷹見さん!」
カーテンがいきなり開くと、繊細なフリルが付いた白のビキニ、そして鷹見さんの真っ白な肌が輝いていた。
小さく締まったお尻と腰が完璧なバランスで曲線を描いている。白い二つのお椀がつんと品良く、かつ大胆に張りだしている。まるで芸術品みたいな体だった。
「どう? 夏休みに絵馬とプールで遊ぶのに買おうと思ってるの」
「ど、どうって……」
「感想よ。女の子が新しい服を着たら、ほめなきゃだめじゃない」
「ほ、ほめろっていったって……」
そうは言われても鷹見さんの身体は息を呑むくらい綺麗で、ほめ言葉どころか文字通り絶句するしかなかったんだ。
「ほらほめて? ああ、言っておくけど単純に可愛いとか綺麗とか、馬鹿みたいに思ってしまうからやめてね? 『可愛い』だなんて誰にでも言える言葉、『僕は頭を使わずテキトーにほめてま~す』と同じような意味にしか聞こえないのだから」
「か、可愛い以外を言えってこと……?」
「早く」
「え、ちょ、待」
考えてみるけど、思いつかない。認めるのは悔しいけど、褒めるだけなら褒めるところがありすぎるんだよなあ。
「愚図。タイムアップ。――正座」
「ひっ」
いつもみたいに鷹見さんの殺気に正座して踏まれてしまった!
これじゃあまるで、僕が鷹見さんの足置きになりたがってるみたいじゃないか!?
鷹見さんは腕組みして立ったまま、僕の頭を片足の素足で踏んでいる。
いつも通り屈辱でしかないんだけど……この体勢、視線を上に向ければ、鷹見さんの水着を着けたきわどいところを直視してしまうんだよな。
太もも付け根にある控えめなホクロとか、視線が釘付けになるので本当にやめてほしい。
「ふふ、忘れていたわごめんなさい。今日は貴方を彼氏として扱うんだった。そうね……今回は、ほめるところがありすぎて言葉が出なかったのだと、好意的に解釈してあげる。女の子のほめ方については、おいおい教えることにするわ」
「そ、それはどうも。できればそろそろ踏むのをやめてほしいんだけど」
「そうね、お腹もすいてきたし、お昼にしましょうか」
足置きからやっと解放されて安堵のため息を一つ。
鷹見さんが水着の会計を済ませた後、近くのレストランに入ることになった。
「貴方、なに飲む? とりあえず二人で違うセットを頼みましょ」
テーブルに向かい合って座り、適当なセットメニューを注文する。
と、そこで気づく。
結局、鷹見さんとしっかりデートしちゃってる気がするな……。
「ねえ、なにかお話して?」
鷹見さんが、やけに楽しそうに目を細めていた。
「お、お話って……?」
「会話よ。ふふ、さっきまでは色々なお店を回りつつ話題も拾えたのでしょうけど、レストランなどでいざ向かい合うと、会話が出てこないのでしょう? だから貴方のような男は、たいして会話せずとも済む映画館などをデートコースに選ぼうとするのだと思うわ」
「そ、そんな事は……ない、と思いたい」
「ふふ、例えば、すでに会話せずとも気楽でいられる関係の場合、映画館デートは素晴らしいものだと思うの。見終わったら感想でも話してればいいだけだしね。でも、そこまで気楽な関係でないならば、するべき会話からただ逃げ回るだけの悪手にもなり得る。現実は恋愛ゲームと違って、単にデートをしたという事実を重ねても女の子との関係が深まる事はない。結局、会話をしてその子に向き合わないといけないし、向き合わないからデートを重ねてもフラれるのよ」
映画館デートが良いか悪いかは置いておいて、会話をしないとその子のことが分からないというのは、事実ではあるんだろう。
「だから、さあ会話よ。それで覚えてる? 以前教えた会話の基本を」
「相手の話を聞く、だっけ」
「そして、そのために?」
「う……『あの方法』を使うって事? ここで?」
鷹見さんの最初のレクチャーで教わった方法を思い浮かべる。
あれは……役には立ったけど、気軽にできる方法ではないというか。
「使わなくてもいいわ。前も言ったけど、『あの方法』は単なる手段の一つよ。大事なのは『相手に相手自身の話をさせること』、そのために相手がどんな生活をしているのかを想像して、話題として掘り起こしていくこと」
そうだった。自分から話して楽しませるのは才能のある人間しかできない。だから「相手に話してもらう」そのための基本を鷹見さんは教えてくれたんだった。
「さ、それじゃあ――会話しましょうか」
鷹見さんが微笑んで、僕が話すのを待つような感じになった。
さて……どうしたものか。
とりあえず前回教わった基本は、話題を掘り起こすため、まずは相手がどんな一日を送っているのか、ざっと想像してみる事だった。
鷹見さんの生活、か……。
というか鷹見さんって小説家だったな。そのあたりは普通に良いネタなんじゃないだろうか?
「鷹見さんっていつも文芸部室で小説を書いてるけど、家では毎日どのくらい書いてるの?」
「そう――小説の話ね?」
鷹見さんが、また悪魔のような微笑みを浮かべた。
――20分後。
「分かる! あの小説、あの伏線からの名言がすごく燃えるっていうか! さっきも言ったけど寮母の
「そうね」
「それにのあのセリフの意味、そんな感じだったんだ! いやー、鷹見さんあの先生に直接聞いただなんてなあ……!」
「ふふ、そうね」
「あとは――」
「ねえ」
「ん?」
「楽しい?」
「……………………」
今起こっている事にやっと気づく。
ああ……やられた、と。
「会話の基本は『相手に相手自身の話をさせること』、そのために相手の話題を掘り起こしにいくのだけど、さらに重要なのは……『自分の話をしないこと』」
「…………」
「どう? 自分の事は話さず、相手の話を聞く。貴方に教えるくらいなのだから、貴方よりはできるわ。とりあえず、どっちが格上の聞き手か思い知らせてあげるくらいにはね」
その通り、こちらが完全に聞かれていた。
鷹見さんの小説の話を訊いたつもりが、いつの間にか僕の好きな本の話題に変わり、そこから寮母の麻子さんとの日常まで、知らないうちに話を広げられていた。
「そして
会話を勝ち負けで判断するのもどうかと思ったけど、今回は完全に僕がもてなされる側だった。それに鷹見さんの生活や趣味もろもろ、こちらは何一つ知ることができなかった。相手の情報を収集して相手にしゃべらせるという目的からすれば、完敗ではある。
「それに私、プライベートを話すのは好きではないの。――
なぜそんな頑なに自分の事を話そうとしないのかが分からない。
でも……これこそが鷹見さんがうっかりこぼした『鷹見さん自身の話』なのかもしれないと思った。
「デザートと紅茶です」
唯一見せた隙。なぜそこまで自分の事を隠すのか。
訊いてみようとした瞬間、店員さんに間に入られて、質問するタイミングを逸してしまった。
「ここのケーキ、美味しいわね」
さらに鷹見さんが話を流そうとしている。
こうなると、僕にできる事は何もなかった。
○
「ふふ、今度はどこに行きましょっか?」
レストランから出ると、鷹見さんがまた手をつないできた。さっきのケーキが美味しくて上機嫌になったせいか、僕に密着するみたいに体を擦り付けてくる。
周囲からの視線がすごいことになってるから、やめてほしいんだけどなあ……。
「あーーーーーーっ!
突然、背後から素っ頓狂に明るい声が聞こえた。
振り向くとそこには……仲良く手をつないだ二人の女の子。
白星さんと
「えへへ、亀丸くんとエレナもデート?」
「へ……? エレナ、ダメ丸とガチでデートしちゃってんの?」
ああ、やっぱり勘違いされたじゃないか!
誤解を解くための台詞を考えてみるけど、でもこれ結局デート以外の何ものでもないんだよなあ……。
と、思っていたら、鷹見さんが僕の顔をくい、と掴んできた。
そうして、その黒い瞳が違づいてきて、
「ちょ、鷹見さんんんんんんんんんんんんんんんんっ!」
いきなりキスされた!
しかも、いつも通りためらいなく舌をねじ込んでくるやつだこれ!
「ぷは……見れば分かる通り、ガチデートよ。私たち、付き合っているのだし」
白星さんも猪熊さんも顔を真っ赤にしている。
それどころか周囲を歩いていた人たちがみんな立ち止まって
「ふふ、今日はカレと徹底的にイチャイチャしていたの。もちろんキスもしたし、その後、カレに私の身体の隅々までぜんぶ見られてしまったわ」
「は!? ちょ、鷹見さ」
すごい嘘をさらりとついたので思わず止めようとしたら、
「太ももの付け根のホクロ(ぼそり)」
「へ……?」
「試着室の、水着。……見たくせに」
耳打ちされて思い出す。水着を試着した鷹見さんに素足で踏まれて、きわどいところを直視してしまった一件を。確かに太ももの付け根にホクロあったな……!
「へ……? ダメ丸の顔赤い。もしかしてエレナの言ってること本当なの?」
「ち、違」
「ふふ、カレったら
違うと叫びたかったけど、微妙に嘘はついてないんだよなあ!
「ふふ、絵馬、もう安心して? この足置きとはすでにさんざんエッチな経験をした仲よ。私が彼女であることは疑いようもないわ」
あ、嘘つき始めた止めよう! 目の前の白星さんに「自分が彼女になった」とでっち上げて、女神スイッチを解くためなんだろうけど!
否定しようと口を開きかけた僕の前で、白星さんが「え、えっちなこと? え、えっち……?」と赤面しつつ目をぐるぐる。猪熊さんが「は!? いや、その、べ、別にいいけど……」と同じくもじもじ。
そんな二人を尻目に、心底楽しそうな微笑みを僕に向けてくる鷹見さんだった。
やっぱり鷹見さんには敵わない。この悪魔は、どこまで底が知れないんだろう。
○
ちなみにその後、鷹見さんのでっち上げがバレて、白星さんが「じゃあやっぱりわたしとデートの練習だね!」と女神スイッチが暴走。
鷹見さんが殺意のオーラを立ち昇らせていて、後日、さらに悪魔契約の押し売りが激しくなったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます