~覚醒人間~

 「……美江さん。この現象はいつまで続くのでしょうか……」

留美はそれだけがどうしても気になっていた。

「……私からはどうも言えません。ですが……言い伝えが全て正しいと仮定するならば、覚醒人間が出来て、1000年後……つまり後、563年……と考えるといいかもしれません。しかし……1000年経てば、これは私の推測ですが、覚醒人間は全滅してしまうと思います……」

「はい、それはもう薄々分かっていました。覚悟は出来ています」

留美はそう言うも、悲し気な声だった。

「……留美……」

「レンさん。これはきっと貴方でも防ぐことは出来ないと思います。しかも、貴方は人間です。貴方が死んでかなり経ってから覚醒人間の最期が来ます。……生まれ変わった貴方がいくら頑張っても……きっと救えないと思います。これが覚醒人間の運命さだめです。これには従うより他はありません。せめて貴方が生きている間、留美を……いや、他の覚醒人間達も保護してあげて下さい」

「美江さんは……!?」

「私は此処に残ります。安心して下さい。此処には誰も来ません。幸いに食料もあります。生きていけるだけの環境はあるので、死ぬことはありません」

「ですが、残りの人生を孤独に過ごすのは勿体無いです。美江さん、私達と来て下さい」

「気持ちは嬉しいです。ですが、私はこの家が好きなんです。この空間が好きなんです。だから動きません。死ぬ時はこの家で死にたいのです」

「美江さん……。分かりました。でも私、遊びに行きますから!!」

「……!! 留美さん……。はい、いつでも来て下さい……! 待ってますから」

「はい……!!」

「……留美、そろそろ帰ろか」

「うん。ずっと上がってるのも悪いからね……」

留美は少し寂し気だが、同意した。

「今日はありがとうございました。御迷惑おかけしてしまいましたが……」

「いえいえこちらこそ、楽しかったですよ。御大事になさって下さい。またいつでも来て下さって大丈夫です」

「ありがとうございます。では、失礼します」

「美江さんも、家に遊びに来て下さいねー!」

レンと留美は美江に別れを告げた。

 二人は下り道を歩く。

「色々聞けて満足だよ。これでさらに調べやすくなった……!」

「良かったね、レン。一時はどうなるかと思ったけどねー」

「御心配おかけしました……。ですが、もう大丈夫です!! 美江さんのジュースのおかげで、元気になりましたので!!」

「良かったぁー。ねぇ、美江さんの作ったジュース、そんなに美味しかったの?」

「美味しかったよー! あんなジュース初めて飲んだよ」

「へぇー、飲んでみたかったなぁー……」

「また遊びに行けば、飲めるかもしれませんよ?」

「そうだよね! また遊びに行こ―と!」

「ははは!」

「あはははは!!」

レンと留美は笑い合いながら、夕暮れの道を歩いた。

「……私は心の赤を持つ者……か。留美達、覚醒人間の全滅……防ぎたい……。一体どうすればいいのだろうか……。次の研究はこれだな。……頑張らねば……」

レンはそう呟きながら。

―しばらくして再び、覚醒現象事件が起きた――――――……


―続―

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