~レン・キルラの考察~
覚醒した人間は最期に赤い涙を浮かべるが、その後、一瞬だけ人間に戻れるということが最近、明らかになった。それは事件を起こした二人の覚醒人、留美と名前不明の少年がきっかけだった。私はあの古い言い伝えの詳細を調べていた。後に分かったことだが、あの後時間が戻り、少年は覚醒人の最期を告げたらしい。目撃者によると、少年が気を失った後、獣から人間に戻り、涙も普通の涙になったとのこと。彼はこれからどうなるのだろうか。今後のことはどうも言えないと留美は言った。留美は一度は覚醒人の最期を迎えたのだが、何とか生きてはいた。だが、どれほど時が経ったのかも、どうやって生きたのかも、覚えていないという。要は、留美は奇跡的に助かったが、少年の場合は分からないとのこと。死ぬかもしれないし、生きるかもしれない。だが、どちらにせよ、人間にはもう戻れないのだと留美は言う。本当にそうなのだろうか。今、此処にいる留美は獣化していない、言えば人間だ。人間に戻っている時はあるのではないかと思うのだ。覚醒すると、最期の時、生死を彷徨い、生の方に行くと、不老不死の覚醒人間になる。獣化しなければ、留美は普通の人間だ。私は留美を抱き締めてそう言った。留美は綺麗な青い目を大きく見開いた。そして大粒の涙を流しながら、ありがとうと言って、目を細めた。
覚醒人間は獣になると、共通して目を赤くする。獣でも二パターンあることも、あの二人と関わって、分かった。人間を襲う本来の獣と、人間を守ろうと戦う獣がある。どちらも赤い目ではあるが、違いは、人間を守ろうとする獣は片方のみ赤くすることが可能で、本来の獣はコントロールが不可能であることにある。どうしてこの違いが生まれたのかは不明だ。だが、覚醒人間も人間と共存していけるのかもしれない。私は隣にいる留美を見た。あの一件から留美は自由自在に獣になることが出来るようになった。留美は大きな青い目でこちらを見て、そしてにこっと笑った。本当は私もあの少年を保護したかった。だがあの様子だと、少年は人間を殺さなければ、元に戻らない。保護したところで、いつまた暴れ出すか分からなかった。
「……申し訳ない、少年……」
「……? どうしたの? レン」
「……あの少年には悪いことをしてしまった……。もし命を落としたのなら、それは私のせいだ……」
「レン……。レンのせいじゃないよ……。あの子もきっと……分かってると思うよ。……キルも」
「キル……?」
「ああ、あの子の名前だよ。……でも、よく考えたらあの子の名前、怖いよね……。『kill』から来てるみたい……」
「『kill』……意味は確か……『殺す』だったな……」
「どうしてそんな名前になったんだろう……。キルは確か、周りの環境が良くなかったのよね……。聞いてあげれば、あんなことにならなかったのかな……」
留美は泣きそうになっていた。
「留美は悪くないよ」
そう言って、私は留美の頭を撫でた。
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