~言い伝え・覚醒の始まり~

 ある言い伝えがあった。

『月満チシ時、人間多数■ス。

月赤キ時、人間一人、覚醒ス。

全テガ覚醒セバ、■■■■セム』

古い言い伝えのため、一部文字が滲んで読めない。そして、誰も信じようとしなかった。所詮、ただの言い伝えだと思っているからだろうか。だが、言い伝えはもう一つあった。

『千年ヲ経テ……■■ハ■■シ、人間救ワレル。救ワレシ人間、極楽浄土へ導カレザルコト無シ』

その言い伝えによると、千年経てば、人間は救われ、死後、極楽浄土へ行けるという。人間はその言い伝えを信じた。そうすることで、たとえ苦しくても、耐えればいいことがあると。そう思い込んだ。

「……何で……。どうして……」

一人の少女は言い伝えを聞き、震える。

「……私……人間じゃ……ない……」

そう、彼女は汚れた獣の血を持つ者だった。今は力で隠しているが、彼女には翼と牙と鋭い爪があった。見た目は可愛らしい少女だが、人間とは比べ物にならないぐらいの握力の持ち主だった。彼女はかつては人間だった。しかしある日、言い伝えが本当になり、覚醒した。そして彼女は人間ではなくなってしまった。

「…………」

そして変わった。彼女は力を解き放ち、獣の姿になる。

「……人間狩り……始める」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る