第3話 授業参観
「なあ、母ちゃん。来週の土曜日に授業参観があるんだけど来れる?」
息子が授業参観が来週あることを母の理奈に告げる。
理奈はカレンダーで予定を確認してから「ごめん、来週土曜日はお仕事なんだ。休みとれるか相談してみるけど難しいかもしれない。
でも、父ちゃんが代わりに観に来てくれるかもよ?」
そういうと息子は残念そうな顔をして、自分の部屋にこもってしまった。
オレがあの事故で亡くなって以降、家族には色んな負担をかけちゃったな。
妻の理奈には、仕事を掛け持ちしてもらい、息子達には塾通いをやめてもらっていた。
ついに、息子達の授業参観日になった。理奈は会社の方と相談し、半休をもらったらしく授業参観の途中で入った。
出入り口付近に留まっていた妻のもとへ駆け寄った。
「理奈、苦労かけてごめんなさい。ずっとあなたの側にいます。」
姿や声は理奈らには届かないが気持ちは伝わったとオレは思った。
「この問題が分かるのはイルカ?」
この授業を担当していた先生が生徒に問い掛けた。
黒板に書かれた問題を見て、一部生徒から反発の声が上がった。
しばらくして、珍しく息子が手を挙げて黒板へ向かいスラスラと書き始めた。
先生が息子が書いた答えをみて「見事、正解だ。説明もしっかりと書いてくれた!素晴らしい。」
「問題文見た時は分からなかったけど、息子が書いた説明文のおかげで解けた。」
思いのほか難しい問題だったと思うが、それ以前にこの問題が解けた息子に驚いた。
「前からこんな問題答えられたかな…?しかも、説明文まで述べることができるなんて。
オレが亡くなってから何かが変わったのかな?」
気にはなったが、姿や声が届かない為、妻の理奈には聞けず終始何でかな?と思った。
その後も、授業はあっという間に過ぎて終わった。
妻は、授業後すぐに帰ってしまったがオレは、授業参観後も教室に残って、息子の様子をみていた。
「今日の授業、普段より難しくなかった?悩んじゃったよ~。」
息子から意外な発言を聞いた。スラスラ書いていた割には、悩んでいたようだった。
息子が帰宅後、妻と授業参観の話をしていた。
「母ちゃん、今日は来てくれたんだね。ありがとう!
なんか、分からないけどあの問題答えられちゃったんだよね。
頭が冴えてたってヤツ?それとも亡き父ちゃんが教えてくれたのかな?」
と息子が話すとすぐさま、妻が「もしかすると、お父ちゃんが教えてくれたんじゃない?あの人、本当は頭良かったんだよ。
いつもは、あんな感じだけどね。出会った初めの頃は頭良かったんだよ。年々、ああいう感じになっちゃったんだ。」
これに関しては、事実ではある。頭良かったのは本当だ。
結婚後、しばらく何もしていなかったためこんな感じになったんだと思う。
正直、まさかこの場で妻から暴露されるとは思ってなかったのでビックリではある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます