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 ――そういえばさ、秋斗君。

 ――ん? どうしたの?

 ――どうしたの、じゃないわよ! 二学期と言ったらあれでしょう!?


 はて、十五歳となった僕たちに残されている一大イベントといえば、あとは受験だけではなかろうか?

 僕は漠然と嫌な気持ちにさせられて、思わず嫌な顔をする。


 ――どうしてそんな嫌そうな顔するのよ! テストを二回乗り越えたら、ようやく楽しみな『修学旅行』が始まるじゃないの!

 ――そうだった。完全に忘れてたよ。

 ――うそでしょ……。

 ――ほんとほんと。


 何も自慢げに、冗談交じりに言えることではないとは思っている。まさか一生徒として、修学旅行という一大イベントを見逃してしまうなど、それこそ『怪物』と言われかねない。

 そもそもの言い訳をするのなら、夏休み。あんなことが起こったから悪いのだ。

 過去を覗き、対峙する、男二人と多数の女の夏の物語。あれがなければこんな失態を起こすことはなかったのだ。


 ――あと何週間後なんだろうねー、楽しみすぎて勉強なんかしてられない!


 糸氏の彼女がそういうので、僕は少しおどけるように言った。


 ――なら、神社にでもプチ修学旅行に行こうか?

 ――どうやら私の彼氏はとっても紳士みたい。


 そんなことを言い合って一緒に帰る。一つの夏の物語を終えて、修学旅行の物語に向けて――『修学旅行物語』に向けて。

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春休物語 ヤマ @yamanoheya

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