第22話 主人公、かばう

 なんやかんやで、お姉様方が私の故郷に来てから数日が経ちました。

 今日の日までに起こったことをダイジェストでお送りすれば、様々なことが起こりました。


 その1

 アークとお姉様が仲良くなりました。


「姉ちゃん」

「なあに、アーク?」

「┉┉呼んだだけだ」

「そう。ふふ」


 そういったやり取りを見て、微笑ましいと思う反面、唇が尖る思いが生まれました。ええ、ぶっちゃけやきもちです。お姉様と仲良くなっていいなー。むー。

 そう思っているのは、私だけじゃないようで。


「┉┉」


 ライさんがお姉様の隣にそっといることが多くなりました。ライさん、独占欲強いですからね。

 でも、関係が悪いわけではなくて、仲良く過ごしています。



 その2

 ライさんが川の主を釣り上げました。


「┉┉魚拓」


 そう呟いてからのライさんはとんでもなく早かったです。荷物から魚拓用のインクと紙を取り出しました。


「ライ様、すごく嬉しそう」


 ライさんの表情があまり変わってはいませんでしたが、なんとなくはしゃいでいるなとは思いました。

 その後の主は、私たちが美味しくいただきました。



 その3

 ライさんの小さな恋敵が登場しました。


「お姉ちゃん綺麗だから、僕と結婚して!」


 そうお姉様に小さな花束を差し出してきたのは、小さな男の子でした。

 お姉様は驚いた顔をしましたが、すぐに微笑みました。


「ありがとう。とても嬉しいわ。でも、ごめんなさい。私にはもう、結婚相手がいるの」

「僕よりも好きなの?」

「ええ、とても、好きな人なの。大事な人」


 だから、とお姉様は続けます。


「あなたも、私よりももっと好きな人と結婚して」


 そう言った時の笑みは、花が咲いたようなものでした。


 

 様々なことが起こりました。

 人生色々です。様々なことが起こります。

 だから、これも、様々なことの一つなのでしょう。


 積んであった材木が落ちてきたのも

 その下に先生がいたのも

 その先生を、私が押し退けたのも

 私の記憶が、そこで途切れたのも


 その、一つなのでしょう。


ーー


 何が起こったか、分からなかった。

 ただ上から積まれた木材が落ちてきて、誰かに突き飛ばされて、僕は地面に倒れて、すごい音がして、

 そして、そしてそして


「┉┉」

「┉┉」


 ピンクが血を流していた。頭から、ピンクの髪が血に混じっていく。


 ああ、これが、予知の、僕のーー


ーー

 

 持てる力のすべてをもって、彼らはココを助け出した。材木をどかし、できる限り治癒の魔法をかけた。


「ココ! ココ!!」

「マリーちゃん、落ち着いて応急手当!」

「ココ、背負うぞ。┉┉耐えろよ」


 目を閉じたままのココにそれぞれ対応するマリアンナ、フウロ、アーク。

 ライは、呆然としたままの兄を殴った拳を見つめ、やがて兄と共に彼らの後を追った。


 

 主人公、メインヒーロー兄、この世界では異端かもしれない二人が、自分を見つめ直す時が、来た。

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