第19話 主要キャラ、集合する

 えーっと、事の起こりを整理しますと。


「みんなで、ココちゃんの故郷で社会学習やらない?」


 そう言ったのは、チャラ男枠兼トリックスターのフウロさんでした。


「まあ、正直に言えば、皆ココちゃんと遊びたかったんだよ」


 正直すぎやしませんか。

 ……や、でも、お姉様も、私と遊びたかったのかと思うと、胸のあたりがきゅぅってなります。

 余計な人が若干1名いらっしゃるのは、いただけませんが。

 ……おほん。

 というか、貴族の方々が集まる学園に、校外学習なんて科目があるのかと思うかもしれません。少なくとも、私は思いました。


「ちゃんと、学園長に許可取ってきたよ。ほぉら」


 ありました。本当にありました。『YOUたち! 社会学習してきちゃいなYO!(意訳です)』と書かれた書類を見せられました、いや、この数日で手続き全て終わらせて、牧場の依頼主にも許可を取るのって、難しくないんでしょうか。


「もういだろココ。考えんのメンどくせぇ。人出はないよりいる方がいいし、本気で遊び出したら引っ張り出せばいい。使えるもんなら貴族でも使うぞ。」


 アークが早々に考えるのをやめて、皆さんをこき使おうと思案し始めました。こういうところは現実的な幼馴染でした。

 ……驚きはしましたが、私も皆さん(若干1名除く)とまたすぐに会えて嬉しいです。


「ココ、よろしくお願いするわ」


 ツナギ姿でさえ様になるとか、お姉様、お姉様……っ!。




「えー、それでは、魔法大学園高等部の皆さん。ようこそいらっしゃいました」


 くすぐったい気持ちになりながら、私は実習に参加する方たちの前に立ちました。


「この牧場の敷地内では、魔法を一切使ってはいけません。使っていいのは、敷地の外です。それと、先ほどは非常事態なので許しましたが、素手で子豚などの家畜を触る時は消毒してください」

「はい!」


 フウロさんが手を上げました。


「はい、フウロさん」

「どうして素手で触っちゃいけないんですか?」


 私が答える前に、アークが答えました。


「あんたら、雑菌塗れの子豚、素手で触りたいか?」


 ダイレクトに言いました。確かに、放し飼いにしてある子豚は土や草に触れて、綺麗とは言い難いです。ですが、そこまで言うほど、汚くはないと思われます。

 正しくは、人も子豚も感染する病気が存在するから、その予防です。前世の知識で言うところの、口蹄疫に近いモノだと思われます。

  

「雑菌……」


 先生が自分の両手を見つめ始めました。先ほど捕まえてましたからね。あとで濡れ布巾を渡しましょう。


「皆さんにやってもらいたいのは、主に子豚のお世話です。餌をあげたり、体を綺麗にしたり、運動させたりします」


 お姉様とフウロさんが、それぞれ声を漏らしました。もちろん、不機嫌な声ではなく、好奇心の声です。聞いてていい声でした。……ライさんは相変わらずでしたが。


「それから、男性女性で別れて、いろいろとお願いすると思います」

「……」


 何か視線を感じましたが、気にしなくてもいい気がしたので無視します。


「それでは、皆さん。よろしくお願いします!」


---


 僕は手を挙げた。


「申し訳ないが、僕は生徒たちを監督する義務がある。作業には参加できない」


 男性女性で分かれての作業だって? そんなの、ピンクとマリアンナを二人きりにさせることになるじゃないか。阻止しなくては。


「じゃあ、最近生まれた子豚たちを散歩してやってくれ」


 ピンクの幼馴染が言った。


「いや、だから僕は---」

「やってくれ」


 有無を言わせない圧力をかけられた。

 だが、ここで食い下がらないわけにはいかない。


「しかし―――」

「お義兄様もやりましょう! お散歩、楽しそうよ!」


 僕はしぶしぶ頷いた。

 だ、大丈夫だ。よく、よおく、ピンクとマリアンナの動向を見ればいいんだ。うん。


「言っとくけど、こいつは子豚じゃねえからな」

「ジョセフ!」


 幼馴染が、ピンクの頭に手を置いた途端、ピンクが叫んだ。


「フン」


 黒馬のジョセフが幼馴染みの頭に歯を立てた。

 ……頑張れ僕。マリアンナを守ろう。絶対に。

 そう心に誓った。

 

---


 少々、場の収拾がつかなくなった。

 しかし、ライは止めなかった。これはこれで、いい絵になるからだ。


「センセ、ホント、マリーちゃんに甘いよね」


 隣のフウロがライに話しかけた。

 自分の兄のことを言われているが、不快ではない。客観的に見て、正しいのだから。本人は厳しくしていると言っているが、それは学業だけだ。それ以外は甘い。

 自分も、例外ではないけれど。


「ココちゃんと同じで、面白い」


 フウロが続けて言った。

 ライは少々憤慨している少女を眺める。初めてマリアンナに紹介された時から、少女はマリアンナに甘かった。マリアンナの言葉に一喜一憂その他もろもろをしていた。

 

「……そうかもしれない」


 飽きない少女と噛まれたその幼馴染み、渋顔の兄と慌てふためく婚約者を見守りつつも、ライはしばし傍観した。


「でしょ? あと、ライ君もね」

「……」


 目敏い年上生徒を流し見てから、口の片端をこれ見よがしに上げた。

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