冬の子どもたち
小さな蕾が産声もなく
仄かなため息で春を呼ぶころ
冬の子どもたちは俄かにあわて始める
かれらは春とともに陽に溶けて
消えるのだから
かれらは電柱の影や自販機の下
植え込みのなかで震えている
わたしが飴玉を投げるとおずおずと
拾ってついてくる
あたまでっかちでところどころ月光に透けて
冬の子どもたちは海に揺蕩うクラゲみたいだ
わたしはかれらを安住の地へ
巨大な冷蔵庫のある工場に
連れて行く
冷蔵庫の厚い扉が閉まるときには
わたしは背を向けている
笛吹き男の気分だ
冷凍されたかれらはいつか
加工され出荷される
大層美味いらしい
携帯端末のニュースフィードに
最近、めっきり雪が減り
温暖化が懸念される、と流れた
わたしは煙草を一本吸うと給金を
携帯端末に受け取り帰路についた
もう冬が終わっていく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます