冬の子どもたち

小さな蕾が産声もなく

仄かなため息で春を呼ぶころ


冬の子どもたちは俄かにあわて始める

かれらは春とともに陽に溶けて

消えるのだから


かれらは電柱の影や自販機の下

植え込みのなかで震えている

わたしが飴玉を投げるとおずおずと

拾ってついてくる


あたまでっかちでところどころ月光に透けて

冬の子どもたちは海に揺蕩うクラゲみたいだ


わたしはかれらを安住の地へ

巨大な冷蔵庫のある工場に

連れて行く

冷蔵庫の厚い扉が閉まるときには

わたしは背を向けている


笛吹き男の気分だ


冷凍されたかれらはいつか

加工され出荷される

大層美味いらしい


携帯端末のニュースフィードに

最近、めっきり雪が減り

温暖化が懸念される、と流れた


わたしは煙草を一本吸うと給金を

携帯端末に受け取り帰路についた


もう冬が終わっていく

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