壺中の夢

あゝ、いいのよ

話すのが嫌になったら

あの壺のなかで

丸くおなりなさい


何事もなかったかのように

わたしは壺を飾るから


野の花を活けてあげましょう

あなたは花の香気のなかで

人々の好奇から逃れ

眠りなさい


喧騒から逃れ幻想に溺れて

人であったころは遠くなり

言葉も忘れ


わたしが笛を吹くと

あなたは

うねりくねり観衆をわかせ

まるで蛇のようになるの


あなたの痕跡は

微かにその哀しみに澄んだ

瞳の色だけ


ねぇ、幸せでしょう?

そんな夢に今はお眠り

誰もあなたを見てはいないわ




※平成三十年二月一五日

《海野しぃる様の『お友達から始めませんか』を参考に》

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