停滞と倦怠の箱のなかで

父さんの部屋には

美しい蝶たちがたくさん死んでいる

父さんのお好みの姿勢でピンに止められ

埋葬もされず

ひたすらあの男から愛を注がれている


父さんの部屋から

解放された死者たちが溢れ出て行く

父さんは膝をつき唖然としてピンの山に

埋没している

ひたむきにその男を愛す私を見もせず


鈍色の空をあらゆる色彩が侵食して

蝶たちの羽ばたきはますます唸りをまして

音という音を飲み込み

静寂を創りだした

そこにはわたしやこの男の鼓動は無い


埃を払い父さんの部屋を掃き清める

誰もが等しくピンで止められている

標本箱の中

みな片手間に夢を見る

蝶たちは羽根を広げて黙りこくっている

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