珈琲と幽霊


幽霊たちは寒いと嘆く


幽霊の熱はゆっくりと失われ

四十九日が過ぎるころ

蝋燭が燃えつきるように

散り散りに消えていく

寒いから人のそばに集まり

その身体と心の熱を感じては

人でなしになった自分を嘆くのだ

食卓の上に置かれた一杯の珈琲から

立ち上る香気と温かさが

幽霊たちを癒す


決して味わうことは出来はしないが

香りと熱は楽しめようか

まだ人であった頃を想いだし

冬の日に暖炉を囲むように

幽霊たちは食卓を囲み

誰にも見えない団蘭をする


だから私は時に淹れたての珈琲を

誰もいない縁側や食卓に

置いておくのです


琥珀色の香気に誘われてくる

彼らのために

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