時の夢

あの水平線の彼方から

流れつくのは

小指

真白い骨の小指


薬指

橈骨

尺骨

手根骨


拾い上げるたびに白い断片は形を成していく

それは右腕

どこか懐かしい真白い骨

これは私が捨てた私

何かを選ぶたびに生まれては

別たれていった数多の私のひとり

お前は十六歳の私か、と濡れた鎖骨に囁く


その骨が

あの水平線の彼方から

流れつく


私は私の骨を拾うのだ

冷たく滑らかで軽い骨の中に

生と死が混在している


骨盤

大腿骨

親指


私の小部屋の中心に腰掛けた

頭蓋骨を欠いたソレが

十六歳の私が呼びかけてくる


さぁ、お前が抱えたこうべを乗せろ

それともお前のこうべを捧げるか


選べ、と私が私に問いかける

やり直せるのだ、と真摯に骨の髄から語りかける


私はそっ、と十六歳の私を抱き締め

肩甲骨に指を這わせ

吸いつくような滑らかさに

骨の奥の記憶の重たさを

失った人を、時を思いながら


イヤ、だと囁いた

タイムマシンはいらない

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