俺の決めた道

第261話 俺はお前を選ばない

『話したい事がある。家の中では話しにくいから外でもいいか?』


『OK。場所はどこ?』


『新札幌の「光の広場」で1時間後に』


『分かった』


 俺は朝食を食べると誰にも話す事なく一人で歩いて出掛けた。元々朝ご飯を食べるのが遅かったし、それに今日は父さんも母さんも家にいるから藍と唯が俺を起こしに来る事が無いのも分かっていたから爆睡(?)していたというのが正しいかもしれない。ホントに久しぶりに爆睡していたのも事実だ。この2週間、藍と唯の事で悩み続けていたのがウソのように頭が冴えている。

 俺は『光の広場』からメールした後もずっと『光の広場』にいた。1時間後との約束ではあるが、それよりも前に来たら失礼になると思って待っていたのだ。

 俺がメールした相手は予想よりも早く来た。


「たっくーん」


 そう、俺がメールした相手は唯だ。唯は俺の姿を見付けると左手を振りながら小走りに俺のところへ来た。到着までの時間から考えて恐らく地下鉄でここまで来たはずだ。

 唯はニコニコ顔で

「ごめーん、ちょっと遅くなっちゃった」

「いや、全然遅くないぞ。むしろ早いくらいだ」

「だってー、たっくんが唯を呼び出すなんてアレしか考えられないからさあ」

「まあ、ここで話すのも何だから場所を変えよう」

「どこにするの?」

「マイスド」

「やっぱり」

「唯は予想してたのか?」

「この場所を指定した時から分かってたわよ」

「そうか・・・じゃあ行くぞ」

「らじゃあ!」

 そう言うと俺と唯はマイスドに向かって並んで歩き始めた。俺と唯の距離は肩が触れるかどうかくらいの距離だ。ここで手を繋いだり腕を組んだりしないところが唯だ。未だに小心者なのは変わってないようだ。

 週末とはいえ、まだお昼には早い。そんな中を俺と唯は三度同じ席、つまり奥の目立たない位置の席に座った。もちろん、俺たちが各々のトレーに乗せている物も三度同じ物で俺はオールファッションとコーヒー、唯はショコラファッションとコーヒーだ。三度目の支払いも各々でした。

 全て同じ事の三度目だ。だから唯はこれから俺が何を言いたいのかを自分なりに分かっているつもりだ。いつになく唯がハイテンションなのは俺にも分かる。

 唯はテーブルの上にトレーを乗せるとニコニコ顔でコーヒーを飲み始めた。

「・・・たっくーん、唯に話したい事ってなーに?」

 唯はコーヒーを半分くらい飲み終えると俺に話し掛けて来た。恐らく唯は俺の口から語られるであろう言葉を自分なりに予想しているからニコニコ顔でいる。

 俺もコーヒーを飲んでる最中は普段の顔と変わらなかったはずだが、さすがにこれを話すのは緊張する。できれば自分からは言いたくないからなあ。もしかしたら超がつく程の緊張した顔になってるかもしれない。唯はそんな俺を見てどう思っているのだろうか?

 俺は無言でコーヒーを飲み終えて、そのまま歩いてきた店員さんにお替りを頼んだ。唯も俺がお替りを頼んだから残っていたコーヒーを全部飲んでカップの中を空にした。お互いに空になったカップに再びコーヒーが注がれたところで俺は唯に話す決心を固めた。

「唯・・・これから重要な事を話す。だから聞いてくれないか?」

「いいよー」

「唯・・・俺はお前を選ばない」

「へ?」

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