第246話 強権発動!?
やれやれ、こういう時だけ俺を頼りにされてもなあ。でも、確かに藍と唯の言う通りだ。藤本先輩は風紀委員長であるし、それ以上に校内を仕切っているのも事実だ。明日以降の平穏(?)な高校生活を確保する為にも、『トキコーの女王様』藤本先輩には懇切丁寧に頭を下げて謝っておくのは最低限やっておかなければならない選択だ。
俺たちは山口先生の机の下に自分たちの鞄を置くと生徒会室へ向かった。正直言って、この三人で生徒会室に入るはトキコー祭が終わって新執行部が立ち上がってからは初めてだ。生徒会室は職員室と同じ1階フロアだから移動に時間はかからない。
帰りのショートホームルームがかなり長引いたから既に大半の生徒は下校したか部活に行っているようだ。廊下を歩いている生徒は廊下の遠くにチラホラと見えるだけだ。
俺たちは生徒会室の前に立ったけど、さすがに入り口ドアを持つ手が自分でも震えてるが分かる。でも、ここで怯んでは駄目だ。俺は覚悟を決めて生徒会室のドアを開けた。
「「「失礼しまーす」」」
俺たち三人は生徒会室のドアを開けたけど・・・そこには生徒会長の西郷先輩と内山しかいなかった。
「あれー、拓真たち、どうしたんだあ?」
「いやー、藤本先輩がいるかと思って訪ねてきたんだけど・・・」
「多分、風紀委員室じゃあないのか?藤本先輩は今日の放課後の担当だぞ」
「あー、そう言えばそうだったわね。唯もすっかり忘れてたよー」
「あのー・・・会長、内山君、今朝の件ですけど大変失礼いたしました。何と言って詫びるべきなのか分からないのですが、とにかくすみませんでした」
藍が西郷先輩と内山に超がつく程の腰の低さで頭を下げたので、俺と唯も藍に倣って頭を下げた。
「あー、いやー、別に個人的には気にしてないぞ。内山から事情は聴いた。むしろおれは拓真には同情するぞ。その様子だと相当の気苦労を背負い込んでるのは間違いないだろ?」
「おれも少々誤解していた面もあるから、拓真だけでなく藍さんや唯さんにも謝らないといけないと思っていた」
「西郷先輩、内山君、唯たちが暴走したのは事実だよ。逆に頭を下げられたら恐縮しちゃうよ」
「今回は私が主犯なのは間違いないです。本当にすみませんでした」
「・・・分かった。佐藤きょうだいの立場が悪くならないよう、生徒会長として出来る限りの事はしたいと思うから、あまり心配するな」
「奥村先輩がさっき土方先輩と話をしてくれて、3年生が変な動きをしないよう上手くやってくれるみたいだし、おれも中村とさっき西郷先輩を交えて話をしたから騒ぎが大きくならないようにする。2年生の方も心配するな。校内はおれたちで上手く収めるから、きょうだいの事はきょうだいで話をして決めてくれればいい」
「そういう事だ。3年生と2年生が騒がなければ1年生も騒がない。おれも会長として植村先生に穏便に済ませるようお願いしてきたし、植村先生も生徒指導の対象にしない事を約束してくれたから大丈夫だ」
「・・・ありがとうございます」
藍はそう言ってからもう1度頭を下げたけど、俺と唯も藍に倣ってもう1度頭を下げた。
「奥村先輩と望月先輩にもよろしくお伝えください」
「あー、わかったよ」
「じゃあ、ちょっと風紀委員室へ行ってきます」
「ああ。藤本先輩が風紀委員室にいなかったらゴメンな」
「分かりました。とりあえず行ってみます」
そう言って俺たち三人は生徒会室を後にした。
そのまま無言で風紀委員室へ向かったのだが・・・あれ?あそこを歩いてるのは篠原だ。何をやってるんだ?
篠原はトボトボと歩いてたけど、やがて風紀委員室の前で立ち止まった。俺は篠原に声を掛けようとしたけど、声を掛ける前に篠原が「はーー」とため息を1つしてから風紀委員室の扉を開けて中に入って行った。
「「「????? (・・? 」」」
俺と藍、唯は何故篠原がため息をつきながらも風紀委員室へ入って行ったのか全然分からないので思わず顔を見合わせてしまったが、行先が風紀委員室だからあまり気にせずに普通に歩いていた。
だが、風紀委員室の前にきて俺が扉に右手を掛けた時に中から声が聞こえた。
「どういう意味だ!」
この声は藤本先輩だ!しかもかなり苛立っているのが丸分かりの声だ!!俺は思わず右手を引っ込めてしまった。
俺と藍、唯は顔を見合わせたかと思うと小声で
「もしかして篠原君、説教されてるの?」
「かもねー。藤本先輩がかなり苛立った声を上げてるから間違いなさそうね」
「でもさあ、何で篠原が風紀委員室で説教されてるんだ?何かマズい事でもしたのか?」
「さあ?お姉さんや唯なら呼び出されても仕方ないけど・・・」
「!!!・・・藍、唯!藤本先輩は・・・」
「「!!!・・・もしかして・・・強権発動!?」」
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