夏休み最後の行事

第237話 夏休みの最後にやる事といえば・・・

 東京で行われた全国大会には顧問として松岡先生も同行した。篠原は1回戦開始前のインタビューで『おれたち3人はクイズ同好会として認められた』と得意気に話していたのが印象的だった。他の強豪校、常連校が次々と脱落する中で準決勝まで俺たちは進出したが、今年も決勝に進めなかった。その敗因は・・・準々決勝までは知力による勝負だったから俺たちは圧勝を続け今年も司会者やゲストを唸らせたが、準決勝は美術の問題だった。『絵による伝達ゲーム』で一人が絵を描き残る二人が答え、正解が出るたびに絵を描く担当を交代して時間内にどれだけ正解を出せるかというのを2回行うという、画力が問われる問題が出され、長田はともかく俺と篠原の幼稚園児並みの絵では他の二人が答えるのに時間を要し、準決勝は最下位で敗退となった。

 俺と篠原、長田は来年こそ決勝進出するとリベンジを誓って再び北海道へ戻ってきた・・・。


 全国大会が終わったらもうお盆だ。北区の霊園にも行ったし、俺の爺ちゃん、婆ちゃんの家にも藍と唯と一緒に行ってきたし、他にも唯の母方のお爺ちゃんとお婆ちゃんのところ、藍のお爺ちゃんとお婆ちゃんのところ、姉貴たちと一緒に石田家にも顔を出してきたし、とにかく今年のお盆はなんだかんだで結構忙しかった。

 それもようやく終わったと思ったら、もう夏休みも終わりだ。北海道はお盆の終わりと共に夏休みが終わる。明日から2学期だ!と言いたのだが、夏休み最後の行事が俺たちを待っている!!

 夏休み最後にやる事といえば・・・それは「夏休みの宿題を最終日に片づける事」だあ!誰にでも経験あると思うけど!?

 当然、藍と唯はそんな事をしない。既に余裕で終わらせてある。俺はいわゆる読書感想文という何ともアホらしい(山口先生の前でそんな事を言ったら『トキコーの〇クセン』モード全開で説教されるから口が裂けても言えない)宿題だけが昨日の段階で残っていた。でも、それは夕飯を食べたら終わらせるつもりでいたし、実際、終わらせた。

 でも、宿題をやってない連中がいた。そう、泰介と歩美ちゃんだ。正直に言うが、二人とも夏休み中、会わなかった日がたったの1日(歩美ちゃんが親戚のお盆に行ってた)だけという位に会っていて、当然だが毎日のようにダラダラ過ごしていたから殆ど手付かずなのだ。

 まあ、去年の夏休みも同じ事をやって、最終日前日の夕方に泰介は俺に、歩美ちゃんは唯に「頼むからテキストを全部写させてくれ」と泣きを入れてきたのだ。さすがに二人共藍に泣きつかなかったのは賢明な判断だが、二人にとって不幸だったのは泰介が俺に電話してきた時、丁度俺は藍とデート中だったのだ。そんな時に泰介は俺に電話を掛けて来たのだから藍がどういう反応をしたのかは容易に想像がつくはず(当たり前の事だが、泰介は俺と藍がデート中だというのは知らない)。しかも俺と泰介があーだこーだ言ってる最中に唯が藍にボヤキの長文メールを入れてきたのだ。

 当然だがデートの邪魔をされた藍がブチ切れて、わざと1時間くらい経った後に泰介と歩美ちゃん、それと唯にメールを送り「拓真君から話は聞きました。明日は私が行きますから唯は(この頃は、二人ともお互いに『藍』『唯』と呼び合っていた)来なくて結構です」と勝手に決めてしまい、翌日は早朝から歩美ちゃんの家に押しかけていき、泰介を呼び出して半ばキレまくり状態で二人に宿題をやらせていた。俺も早朝から呼び出され何故か「小野君が毎日遊びまくっているのを知っていながら放任していた親友の罪は重い」などと訳の分からない理由をつけて俺まで説教される始末で、藍自身は歩美ちゃんの宿題をビシッとやらせたし、俺には泰介の宿題をつきっきりでやらせた。というより俺に泰介の監視をさせた。当然、テキスト丸写しなど藍が許可する訳ない。

 泰介も歩美ちゃんもヒーヒー言いながら朝の7時から夕方の7時過ぎまで掛かって終わらせて「来年はちゃんと計画的にやりますから」と藍に詫びを入れた筈なのだが・・・。



「「行ってきまーす」」

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