第218話 作った身にもなってみろ!

 山口先生の声に俺たち三人は立ち上がった。2巡目に俺たちより前にやった3チームはどのチームも1巡目より得点を稼いでいて、奥村先輩たちのチームは2巡目14問で暫定24ポイント、内山たちは2巡目12問で暫定23ポイント、西郷先輩たちは13問で暫定24ポイントだから、少なくとも13ポイントを取らないと駄目だ。いや、俺たちが狙うは20ポイントだ。それ以外は駄目だ。

 1巡目の時と同じく、長田は山口先生が持っている箱から封筒を1通取り出した。

「山口先生、『数学者・物理学者・天文学者』です」

 長田、お前、結構いい問題を引き当ててくれたなあ。これなら満点を取れるかも。いや、取れるかもではなく取れる!もう藍の視線なんか怖くない!!


“よーし、準備はいいな。ではスタート”


「紀元前275年~紀元前194年、古代エジプト」

「エラトステネス」

「1706年1月17日~1790年4月17日」

「ベンジャミン・フランクリン」

「紀元前582年~ 紀元前496年」

「ピタゴラス」

「1571年12月27日~1630年11月15日」

「ヨハネス・ケプラー」

「1867年11月7日~1934年7月4日」

「キュリー夫人」

「1700年2月8日~1782年3月17日、スイス」

「ダニエル・ベルヌーイ」

「1743年4月13日~1826年7月4日、アメリカ」

「トーマス・ジェファーソン」

「1912年6月23日~1954年6月7日」

「アラン・チューリング」

「1777年4月30日~1855年2月23日」

「カール・フリードリヒ・ガウス」

「生まれは350年から370年頃の間~415年3月、ローマ」

「ヒュパティア」

「1707年4月15日~1783年9月18日、スイス」

「レオンハルト・オイラー」

「紀元前287年頃~紀元前212年、古代ギリシャ」

「アルキメデス」

「1831年6月13日~1879年11月5日」

「ジェームズ・クラーク・マクスウェル」

「生年は寛永かんえい12年~20年の間で諸説有、没年は宝永ほうえい5年10月24日」

関孝和せきたかかず

「1768年3月21日~1830年5月16日」

「ジョゼフ・フーリエ」

「1749年3月23日~1827年3月5日」

「ピエール=シモン・ラプラス」

「明治3年9月10日~昭和18年9月26日」

木村きむらひさし

「1889年11月20日~1953年9月28日」

「エドウィン・ハッブル」

「1738年11月15日~1822年8月25日、ドイツ・ハノーファー出身で」

「ウィリアム・ハーシェル」

「1170年頃~1250年頃、イタリア」

「レオナルド・フィボナッチ」

「・・・・・」

「おーい、ながたー、早く次の問題を言えー」

「あー、スマン、もう終わりだー」

「「「「「「「「はあ?もう終わりだとお!!」」」」」」」」

「そう言えばカウンターが20になってたなあ。全然見てなかった」


“あ、ああ、たしかに長田の言う通り終わりだ・・・今タイムアップだ。お前らー、一体、どういう頭をしてるんだ!?”


『・・・まったくだ。ほとんど生年月日と没年月日を言っただけで答えたに等しいからな。そんな事をやるなんて馬鹿以外の何者でもないぞ!問題を作った斎藤先生の身にもなってみろ!篠原も拓真も競い合うように答えやがって』

「あー、すんません。俺が唯一篠原とガチで張り合える雑学は、こういう教科書に出てくるような人物の生年月日や没年月日だけですからー」

『たくまー、アッサリ言うなよー。おーい、クイズ同好会以外の生徒でニュートンとレオナルド・ダ・ヴィンチとガリレオ・ガリレイの生年月日と没年月日を答えられる奴がいたら手を上げてくれー!』

 松岡先生は小ホールにいる連中全員にマイクで大声をあげて聞いたけど、誰一人として手を上げる奴はいなかった。当然だが相沢先輩たちも佐藤三姉妹も顎が外れるんじゃあないかという位に口をあんぐりと開けて呆然としていたし、教頭先生も呆気に取られたような顔をしていた。それに、観客もあまりの凄まじさに声も出せないようだった。俺としてみればまさに直球勝負のクイズだったが、思った以上に簡単(?)だった。

『とにかく、こんな説明と答え方をされたらNGヒントがある訳ない!というより長田も長田だ。教師の俺だってこの問題に書かれた人物が何をやったのかを全部答えられないのに、どういう人物なのか知ってて説明者をやってたんだろ?一番最初のエラトステネスって、何をやった人物か言ってみろ』

「あー、エラトステネスって人は地球の大きさを最初に測った人物ですよー」

『長田!普通はそっちで説明するぞ!』

「でもー、それだと面白くないからオレたち流のクイズ合戦の延長でやりましたー」

『ホントに三人揃って化け物だ!』


“まったくだ。それに、さっきの佐藤三姉妹や相沢たちも時間ギリギリで20問クリアだったのに、1分ちょっとで余裕のクリアなんて信じられんぞ”


『はー・・・とにかく、次は相沢、藤本、村山だ。言いたくないが10問答えれば半分NGヒントでも決勝進出だから何かやるのもアホらしくなってきた』


“おーい、松岡せんせー、それを言ったら西郷たちに失礼だぞ”


『あー、スマン、今のはホントに済まなかった。そこは謝る』


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