第217話 神や天才をも上回る『普通の人間』
1巡目が終わった。
全チームの結果は次の通りだ。20問が佐藤三姉妹と相沢先輩たちのチーム、11問が俺たちクイズ同好会と西郷先輩たちのチーム、内山たちのチームで並び、10問が奥村先輩たちのチームだ。
肝心のNGヒントの判定なのだが・・・最後にやった西郷先輩たちのチームが終わった時点で松岡先生たち9人が集まってあーだこーだ言って色々とやってたけど1分もしないうちに松岡先生がマイクを持って立ち上がった。
『あー、それでは1巡目のNGヒントについて発表するぞ。全チーム無し!と言いたいところだが、相沢、
「まあ、仕方ないですね。わたしも言ってからヤバイかなあって思ってましたから。それに真姫や村山さんも思ってましたから納得してます」
『じゃあ、2巡目の前に篠原と西郷、それと内山はジャンケンをして、勝った順にクイズをやってもらう』
篠原と西郷先輩、内山は立ち上がってジャンケンをしたが、相変わらず篠原のジャンケンの弱さは致命的で、あっさりジャンケンに負けた。これにより2巡目のクイズ同好会は4番目にやる事が決まった。
奥村先輩たちは早速2巡目のクイズを始めたが、あっさりジャンケンに負けた篠原が何を思ったのか俺の左に座り、こともあろうか俺の首に右腕を回して小声で
「たくまー、結構顔色が悪いぞ」
「ん?至って俺は平静のつもりだが・・・」
「さっきのお前はおかしかった。まるで何かに怯えていたかのようだった」
「!!!!!」
「まさかとは思うが、いきなり満点を2チーム続けて出した事で委縮したのか?」
「・・・スマン」
「おれから言わせれば、あいつらは神でも、ましてや天才でも何でもない」
「・・・あれが神や天才でなかったら、何をもってして神や天才と言えばいいんだ?」
「相沢先輩も藤本先輩も村山先輩も、それに佐藤三姉妹も人間だ。ただそれだけだ」
「しのはらー、あっさり言うなあ」
「『
「・・・たしかに」
「それに、神や天才に挑んだ人間がいたからこそ、神や天才が負けたんだ。最初から負ける気でいたら神や天才を俺たちと同じ地面に立たせる事は出来ないんだぜ」
「しのはらー、お前、結構いい事を言うなあ」
「たくまー、お前が去年の本選開始直前におれと長田に言ったセリフだぞ。忘れたのか?」
「!!!!!」
「おれたちトキコーは『高校生クイズキング選手権』の常連校や強豪校から見れば無名校だ。最初から常連校や強豪校に負ける気で勝負に挑む馬鹿がどこいるんだ?どの学校も優勝以外は狙ってないだろって拓真がおれたちを鼓舞したのを忘れたのか?」
「・・・言われてみればそうだった。俺はすっかり忘れてたよ」
「お前に何があったのか知らないが、さっきのお前はお前らしくなかった。まさに神や天才を前にして委縮してた。最初から負ける気でいたら勝負にならんぞ」
「ああ、そうだな。俺たちは神や天才をも上回る『普通の人間』だよな。まさに下克上だよな」
「ようやく自分で言った言葉を思い出したな。長田の苦労に報いる為にも逆転を狙うぞ」
「当たり前だ。狙うはパーフェクトのみ」
正直、篠原に言われるまでもなく俺の1巡目は結構足を引っ張ったというのを自覚している。篠原が球技名を言った後、俺は結構言い出すのが遅かった。自分でもタイムロスをしたというのが分かっていた。
だが、俺は藍の、正確には『知識の女神』の影に怯えていたのは事実だ。藍は俺の正面の位置に座って、あの冷徹な目で俺をずうっと見ていた。あれが俺に計り知れないプレッシャーを与えていたから俺は完全に冷静さを失っていた。だから1回戦の7問目『
でも、篠原の言葉は結構俺の心に響いた。俺自身が篠原と長田に言った言葉ではあるが、改めて篠原から言われてみて名言なのかなと思えるくらいに心に響いたよ。俺は『普通の人間』だ。でも、俺たちクイズ同好会は三人で神や天才を上回る『普通の人間』だからな。言った本人が忘れてたのは恥ずかしいけど、もう迷わない。藍の影に怯える必要はない。俺は神や天才をも上回る『普通の人間』だ。
“次、クイズ同好会”
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