第219話 常識外れ
俺たちの凄まじい(?)というか常識外れのやり方を見て動揺したのか、相沢先輩が選んだ『
「あれー?相沢先輩も藤本先輩も日本地理は苦手だったのかなあ?」
「うーん、唯先輩、それは多分違うと思います。
「植村先生も斎藤先生も藤本先輩には泣かされてるから、相沢先輩ともども一泡吹かせて満足したってところじゃあないかしら?」
「多分、藍先輩の言う通りだと思いますよ。長田先輩の辞書丸暗記と篠原先輩の雑学力だったら全問正解したかもしれませんけど、わたしでも説明できたか自信ないですから、超難問を引き当ててくれた相沢先輩には感謝しないといけませんね」
「まあ、唯たちは楽勝よね」
「そうね。舞さん、次も頼みますよ」
「任せて下さい!また満点を取って拓真先輩だけでなく篠原先輩と長田先輩をもギャフンと言わせましょう!」
「「「オー!」」」
おいおい、お前ら、俺が目の前にいるのに無視かよ。勘弁してくれよお。
その舞がニコニコ顔で箱から1通取り出したのだが、その封筒に書かれた文字を見て目丸くして叫んだ。
「はあ?こんなの有りなんですかあ!?」
“おー、全20問中、最高の難問を引き当てたなー。それは高校生クイズキング選手権では絶対に出ないであろう、トキコークイズ勝負ならではの問題だぞー”
「あのー、舞ちゃん、どんな問題なの?」
「勘弁してくださいよお。『BKA48の曲』って何ですかあ!?」
「「はあ?『BKA48の曲』!?」」
“あー、それは前川さんと小島先生の
「マジですかあ!?さすがのわたしも古い曲とかMMB48の曲は殆ど知らないですよー」
“そんな事を言っても変更は認めませーん”
「もしかして、この問題があるからダンスの腕の振りとか踊り方で説明できないように後ろで喋らせてるんですかあ!?」
“そうだぞー。この問題を最高難度に引き上げる為に教頭先生が今日になってルールを変更している”
「勘弁してくださいよお」
「そうよそうよ!」
「意地悪問題でしょ!」
“運が悪かったと思って諦めろー。さあ、文句を言ってる暇があったら三人とも早く席につけー”
渋々だが三人とも席についたが、舞の予感は的中し、佐藤三姉妹は前川さんと小島先生合作の常識外れというか珍問の『BKA48の曲』で舞がブレーキになって大苦戦した。さすがのオタク女もアイドルグループの曲のタイトル名を説明する事が出来ず、やむを得ず曲の出だし部分やサビの部分を歌っていたが舞には失礼だが爆笑モノの音痴(?)で小ホールは舞が歌うたびに大爆笑が巻き起こり、俺たち他のチームの連中も腹を抱えていたし松岡先生や山口先生たち教師陣も笑いを堪えるのに必死だった。
舞が曲のタイトルそのものを知らなくてパスしたのが5曲、曲の出だしやサビの部分にタイトルの一部が含まれていた為に、判定会議では「ハミングならNGヒントにする気はないけど、歌っちゃったからね」「そうだよねー」「そういう事だ」と小島先生や前川さんだけでなく松岡先生にまで大声でダメ出しされるのが俺たちの席にまで聞こえてくるくらいで、その部分を歌ったという理由で何と4曲がNGヒントと判定された。筋金入りのBKAオタクの長田からは「ぜーんぶCMのテーマ曲とかドラマやアニメのオープニングやエンディングで使われてたから、そっちで説明すれば簡単だったのに舞ちゃんは相当焦ってた顔してたから頭からぶっ飛んでたね」とツッコミが入って舞が目茶苦茶凹んでいた。
さらに、終盤には舞が腕を振りながら一生懸命(?)歌っていた時に唯が振り向いてしまうというミスを犯したので、松岡先生以下審判員9人全員一致の判定で唯に対してルール違反のペナルティが課せられて1ポイント減点された。
爆笑モノの音痴(?)が災いして藍も唯もタイトル名がなかなか出てこなくて、佐藤三姉妹が2巡目に得たのはたった4ポイントだった。
その結果、俺たちクイズ同好会が31ポイントで1位。相沢先輩たちが1巡目の貯金が効いて27ポイントで2位となり、この2チームは決勝進出が決まった。
だが、3位は佐藤三姉妹が2巡目ダントツ最下位も1巡目の貯金が物を言って24ポイント、1巡目最下位の奥村先輩たちのチーム、コンスタントにポイントを稼いだ西郷先輩たちのチームも24ポイントで並び、まさかの早押しクイズが行われる事になった。残念ながら内山たちのチームは1ポイント差で敗退が決まった。
まさに『勝負は下駄を履くまで分からない』の
”じゃあ、決勝進出を掛けた早押し問題を行くぞ!問題、日本の歴代の天皇の中で、神話に登場する天皇を除いて最も長寿”
♪ピンポーン♪
3チームの手が殆ど同時に動いた。ランプがついたのは・・・はあ?ランプがついたのは奥村先輩たちのテーブルだ!この瞬間、藍も唯も舞も、それに西郷先輩たちも顔は真っ青になっている。逆に奥村先輩たちは興奮したような表情をしているぞ。
”おっ!意外にも奥村たちのランプがついたなあ。押したのは誰だ?”
「はい、おれです!」
”
「山口せんせいー、ワースト人気なのは分かってるけど
”まあ、さっきのは冗談だ。じゃあ、生徒会長と新旧生徒会副会長の
「
望月先輩が自信満々にこう言った瞬間、奥村先輩と森山先輩は歓喜の笑みをし、逆に藍たちと西郷先輩たちは
だが、松岡先生は『×』の札を上げた。
「えーっ!どうしてですかあ?」
『もちづきー、問題を最後まで聞けよー。相沢と同じで早とちりだぞー』
「マジですかあ!?」
この瞬間、藍たちも西郷先輩たちも明らかにホッとしたような顔をし、逆に望月先輩、奥村先輩、森山先輩は泣きそうな顔になった。
『そういう事だ。じゃあ、解答権がある佐藤三姉妹と西郷たちだけで続きをやってもらうぞ。山口先生、頼みますよー』
”じゃあ、2チームにもう1回最初から読み上げるぞ。日本の歴代の天皇の中で、神話に登場する天皇を除いて最も長寿だったのは昭和天皇ですが、2番目に”
♪ピンポーン♪
2チームの手がほぼ同時に動いたが今度は藍たちのランプがついた。
”おー、佐藤三姉妹かあ。が、ちょっと待て。望月、この答えを知ってるか?”
「当たり前じゃあないですかあ。マジで悔しいですよお」
”まあ諦めろ。それじゃあ佐藤三姉妹、答えを言ってみろ!”
山口先生は藍たちに答えを催促したけど、藍と唯、舞は三人で顔を見合わせてニコッとした後に唯が左手を高々と上げて
「せーの」
「「「
三人とも超がつく程のご機嫌な顔をしているし、西郷先輩、宇津井先輩、本岡先輩は悔しそうな顔をしている。さすがに俺もこの答えは知っていた。
『よーし、決勝進出は佐藤三姉妹に決定!』
松岡先生がそう言うと、改めて藍も唯も舞も歓喜の笑顔をした。奥村先輩たちと西郷先輩たちの2チームは健闘を称え合って藍たちと握手を交わし、俺たちとも握手を交わした。
俺たちクイズ同好会は「決勝進出は無理」という下馬評を覆しての1位突破となった。特に長田の常識外れ(?)の説明ぶりは他のチームからも称賛され、『文学王』長田の株が急上昇した結果になった。
作者注釈:
神話の時代の天皇は百歳超えが何人もいます。
日本書紀によると、第12代の
文献が残っている中での最長寿という意味では、先の天皇である第124代の
以前にも書いた事がありますが、この作品は北海道新幹線開業の7年前の設定です。そのため、
藍たちが答えた第108代天皇の後水尾天皇(
今上天皇が御存命なので昭和天皇を抜いて1位に上がる可能性はありますが、現時点では今上天皇は2位です。
因みに昭和天皇は、在位年数でも文献が残っている中では
そう考えると、神話の時代の天皇もある意味「常識外れ」なのかもしれませんね。
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