第194話 新たな七不思議

 ミステリー研究会は旧校舎3階の階段を上がった最初の部屋でやってたのだが、予想していた通りでガラガラの状態だった。そこで留守番役をやっていたのは村山先輩だった。

「こんにちはー」

「えっ?誰かと思ったら藍ちゃんと拓真君ではありませんか?」

「『トキコー七不思議』がどうなったのか気になったので見にきました」

「あー、その件ですね。それならそちらにあるから自由に見て行ってね」

「はーい、そうさせて頂きます」

「それはそうと『準ミス・トキコー』おめでとう」

「あー、ありがとうざいます」

「こんな殺風景な部屋で良ければ楽しんで行ってね」

「あー、でも、もう少ししたら凄い事になると思いますよ」

「どういう意味なの?」

「あれ?村山先輩にはまだ話が伝わってないんですね。舞さんがメイド服を着てここに来るんですよ」

「えー!拓真君、それってホントなの?」

「ホントですよー。相沢先輩が使ってたメイド服は今は舞が着てますから」

「それなら、この教室で撮影会をやる事になるのかしら?」

「多分、そうなると思いますよー」

「ウッソー!それなら部長以下全員に知らせておかないと。それにどうせなら平川先生も呼んで一緒に記念撮影しちゃいましょう!」

「それはいいかもしれませんね」

「じゃあ、あなたたちは自由に見て行ってね」

「はい、そうさせてもらいます」

 えーと、『トキコー七不思議』はこの部屋のどこにあるんだろう・・・あ、あれだ。さすがにミステリー研究会が1年かけて調査した成果だけあって、取り扱いが立派(?)だな。俺と藍は教室の後ろ側の壁に貼り付けてある大きな模造紙に書かれた『トキコー七不思議』の前に行き、その七不思議を目で読み上げていった。


 1つ目は、「おおきなのっぽの古時計」は食堂の主の怒りを買い、90年で動きを止めた


 2つ目は、午前0時にトキコーのとある場所にいると、異世界への門が開く。


 3つ目は、トキコーを囲む塀は生きていて、それが起きている時は喋り出す


 4つ目は、トキコー図書室の膨大な本の中には「知識の女神」が残した書物があり、それを読むと女神の知識を授かる事ができる。


 5つ目は、土曜日の深夜の校内を一人で歩くとギターの音色が聞こえる。


 6つ目は、無人のピンクの軽自動車が走っている。


 7つ目は・・・これを知った者は神になる。


 なるほど、4番目と6番目が去年と違う・・・6番目は高崎さんなのは間違いない。となると4番目が平川先生と去年のミステリー研究会の部長さんが見付けたというミステリーになるか。


“グイグイ”


 あれ?なんだあ?藍が俺の服の左袖を引っ張るから何事かと思って藍を見たけど、手で俺に「こっちへ来て」と手招きしてるから、多分大きな声で話せない内容なのだと気付いた。それに目がマジだ。女王様を彷彿させるクールな目ではなく何かを訴えるかのような視線だ。

 俺は藍に顔だけを寄せると藍は小声で

「・・・拓真君、4番目のミステリーなんだけど、これは恐らく実在するわ」


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