第193話 佐藤三姉妹の撮影会

 もちろん、この話は俺たちの周囲にいた連中が聞きつけ、早速メールや電話で伝えたからたちまち校内中に知れ渡ってしまった。早くも藍や舞に「早く着替えてくださいよお」と目で催促するような連中がこのテーブルを取り囲んでしまった。男子が多いけど女子も相当いる。

 だから四人とも大慌てで食べ終わると女子更衣室へ直行するハメになった。しかも、女子更衣室周辺には暇な連中が男女問わず大挙して押し寄せてきてるから女子更衣室に入るだけで一苦労する有様だった。

 先に相沢先輩と藤本先輩が揃って出てきて、それに続いて藍と舞が出てきたら大歓声が上がって一斉に写真を撮り始めた。相沢先輩と藤本先輩も自分のスマホで二人の写真を撮ってるし、噂を聞きつけて新聞部まで駆けつける騒ぎだ。

 そのまま藍と舞は並んで歩いていったけど、二人が向かった先は何と2年A組だ。当然だがA組周辺は唯に占ってもらおうとする連中が廊下まで列を作って並んでたけど、その連中だけでなくB組やC組にいた連中、他にも大勢の連中が廊下で藍と舞をスマホで撮っている。どうやら噂はここにまで届いていたようだ。

 A組に入ったら入ったで大騒ぎになり、しかも唯の耳には届いてなかったようで「えー!二人とも、一体どうしたの?」と目を丸めて驚いてた。それにA組にいた連中が「三人で並んで下さいよお」と一斉に騒ぎ出したから仕方なく唯はタロットの占いの手を止めて立ち上がり、『準ミス・トキコー』の藍を真ん中、藍の右に舞、左に唯が立つ形で臨時の撮影会が始まり、相沢先輩や藤本先輩、占い待ちの連中だけでなく、泰介や裏方の中村、立花、寺島、占いをやっていた大橋さんや津田さん、受付担当をしていた歩美ちゃんも自分のスマホで写真を取り始めて教室の中は大勢の人で身動きもままならない状態だ。それに何故か原田先生や山口先生までデジカメを持ってA組に来る始末で、2日続けて占いどころではなくなってしまった。何しろ本当に予定外のの会場になってしまったのだから。

 藍は中央で女王様の貫禄を見せているし、唯はいつも通りの自然な笑みを見せてニコニコしている。舞はロリ顔ロリっ子の完全な妹キャラだが、こちらも笑みを見せている。でも、舞が着ているのは元々相沢先輩が着ていたLサイズのメイド服だ。Mサイズを着ている唯よりも一回り小さい舞がLサイズを着ているのだから、それこそ子供がメイドさんごっこをしているようにしか見えない。それに相沢先輩や藤本先輩が言ってた通りパットを入れて胸の部分を誤魔化している。これを笑ったら舞に失礼だし、だいたい藤本先輩が気付いたら絶対に風紀委員長の強権を発動されて、下手をしたら本当に神薙先輩か峰原先輩を紹介(?)させられそうだから気付かなかったフリをしておきましょう。

 さすがに撮影会は15分くらいで終了し、舞は1年B組に行くと言って一人で出て行き、藍は校内を回ってくると言って教室を出て行ったから、ようやく騒ぎが収まって唯はタロット占いを再開した。でもなあ、唯に占ってもらいたくて並んでる人、大変申し訳ありありませんが後ろの方の人はもう絶望ですよ、ゴメンナサイ。

 ところで俺はというと・・・結局、藍に連れ出される形で校内を歩くハメになった。しかも今の藍はメイド服だから目立つことこの上ない。さすがにこれだけの人がいる前で手を繋いだり腕を組んだりして歩く事はしてないが、並んで歩いている事には違いない。

「あのー、どこへ行くつもりんだ?」

「そうねえ、全然決めてなかったんだけど、まずはミステリー研究会へ行って『トキコー七不思議』がどう書き換わったのかを見に行きましょう」

「それもそうだな。俺も確認したいからな」

「じゃあ行きましょう」

 俺は藍と一緒に旧校舎へ向かったのだが・・・当たり前だが藍は行く先々で盛んに声を掛けられるし、また「一緒に写真を撮ってもいいですか?」と言ってくる人も結構いるからその度に足止めさせられて、ミステリー研究会の会場へ行くだけでかなりの時間を使うハメになってしまった。

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