第190話 ミス・トキコー⑥~最多得票者、影の最多得票者

 唯がこう告げると会場の照明が全部消され、2つのスポットライトがエントリーした11人をぐるぐると照らし続けている。


“エントリー番号9番、相沢美咲先輩です”

「「「「「「ウォーーーーー!!!!」」」」


 会場から大歓声が上がり、それと同時に相沢先輩の所にスポットライトが集中した。相沢先輩は歓喜の笑みをしているし、周囲にいた藍や他のエントリー者から祝福を受けている。

 という事は、二人の女王様のうち、どちらかが『ミス・トキコー』で、もう一人は3位となるはずだ・・・どっちなんだ?会場がざわめき始めた。


“えー、それでは『ミス・トキコー』を発表したいと思いまーす。が、その前にお知らせがありまーす”


 唯の一言で会場が再び静まり返った。一体、お知らせって何だ?


“今年は『準ミス・トキコー』がもう一人います。そちらから発表しまーす”

「「「「「「えーーーーーー!!!!!!」」」」」」


 会場はもう大騒ぎだ。となると、もう一人の『準ミス・トキコー』はどっちだ?藍なのか、それとも藤本先輩なのか。


“もう一人の『準ミス・トキコー』は・・・エントリー番号10番、佐藤藍さんでーす”


 この声に会場から大歓声が上がった。藍も一瞬だがキョトンとした表情になったけど、相沢先輩や藤本先輩から祝福されて笑顔で返している。


“では、最後に『ミス・トキコー』を発表します。エントリー番号11番、藤本真姫先輩です”


 最後の最後に藤本先輩が『ミス・トキコー』に選ばれた事が発表され、再び会場から大歓声が上がった。当然だが藤本先輩はクールな笑みを絶やさなかったが、それでも周りからの祝福に丁寧に応えていた。


“因みに、この三人の得票差は僅か2票でした。以上で結果発表を終わります。では、まずは『準ミス・トキコー』の相沢先輩から一言お願いします”


 会場内は、まさか三強が『ミス・トキコー』と『準ミス・トキコー』にキッチリ収まる事になるとは予想してなかったようで、ある意味、安堵の声が上がっていた。しかも得票差が僅か2票なのだ。これだけ『無効票』があった中での2票差だから揉め事にならずに済みそうだ。

 ただ・・・今回の最多得票は本当は藤本先輩ではない。

 そう、想像がつくと思うけど、影の最多得票者は唯だ。投票用紙の欄外に『佐藤唯』と書いて投票された物、それと佐藤藍の名前の藍の字に×を付けたりボールペンでぐちゃぐちゃに塗りつぶした横や下に『唯』と書き込んで、藍の欄に〇をつけて投票された物が無効票52%のほぼ全部だ。白票が3票しかなかった事からも、唯が影の最多得票者だったのには間違いない。

 唯への投票が集中した理由だが・・・恐らく、唯への同情票、もしくは今回の選挙への棄権の意味を込めて唯へ投票したのだと思う。でも、当日の会場の盛り上がりも唯だけが圧倒していたから、メイド服というコスプレで司会をしていた事もあったのかもしれない。これは後日の反省会でも議題にあがりそうだな。

 ステージ上では校長先生から表彰状の授与と『ミス・トキコー』『準ミス・トキコー』の記念撮影が行われていて新聞部や写真撮影同好会がステージ上で撮影をしている。それに理事長や校長先生との記念撮影も行われた。『準ミス・トキコー』の表彰状は元々1枚しか用意されてなかったから、大慌てで黒田先生が職員室へ走って行って用意して、何とか表彰式に間に合って藍に渡された。その間、三人の姿を収めようと会場の連中も盛んにスマホを使って写真を撮ってたが、さすがにこの時の唯はわざと後ろに下がって会場からは見えない位置、つまり俺たち実行委員よりも後ろにいた。唯もさっきから自分が目立ち過ぎている事に気付いていたんだろう。


“以上を持ちまして『ミス・トキコー』を終了します”


 唯が終了を宣言した事で今年の『ミス・トキコー』が終了となり、同時にステージの幕が降ろされた。この後は午後1時まで講堂を使う予定がないし、俺たちも束の間の休憩だ。

 とにかく、史上初めて『準ミス・トキコー』に二人が選ばれた今年のビッグイベント『ミス・トキコー』はこれで無事終了となった。

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