第187話 ミス・トキコー③~吉と出るのか凶と出るのか
宇津井先輩は唯からマイクを受け取ると軽快な口調で話し始めた。
「相沢さんの代名詞ともなっている『白雪姫』は、雪のように白い肌と可憐な赤い唇、それと美しい黒髪で、魔法の鏡が「世界で一番美しいのは白雪姫」と答えたように、まさに絶世の美女でした。相沢さんはその童話の世界の『白雪姫』が現代に現れた、そんなイメージの子だよ。それに春に雪を割るようにして咲いた一輪の華麗な花のような相沢さんは入学以来、クラスの、いや学年のアイドルとして・・・」
「みんな、相沢美咲をよろしくね」
相沢先輩は推薦者である宇津井先輩が時間の大半を使った。宇津井先輩の話術は結構上手いし、抑揚を巧みに使って聞く側を魅了している。それに宇津井先輩の爽やかなイメージと相まって、うまく相沢先輩を持ち上げる事に成功している。相沢先輩もわざと一言しか喋らない事で宇津井先輩を生かしている。相当練習してきたというのが伺えるぞ。
“続いてエントリー番号10番、佐藤藍さんと推薦者の村田由香さん、お願いします”
村田さんは唯からマイクを受け取るとにこやかな表情で喋り始めた。
「みんなー、女王って言葉の使い方を知ってる?辞書で調べると『一般に「王」のうち女性であるもの、または男性の「王」に相当する女性の地位』と書かれてるんだよー。A組の『女王陛下』佐藤藍さんはリーダーとして、時に優しく、時に怖くて、時にはお淑やかに・・・」
「・・・・・」
え?・・・
藍は一言も喋らなかった。しかも、村田さんは『女王様』ではなく『女王』としての藍を時に真面目に、時にはユーモラスに、会場を笑いの渦に巻き込んで上手くリードした。昨年の藤本先輩は『女王様』を前面に出していたし、一昨年も『女王様』としてアピールしていたから、おそらく差別化を図ったはずだ。それに藍はさっきまでは普段通りクールな笑みをしていたけど、村田さんの応援演説の間は終始ニコニコしていて、唯を思わせるような笑みを振りまいていた。まさに『萌え』で勝負を掛けたんだ。その証拠に特に男子が熱狂している。
“それでは最後にエントリー番号11番、藤本先輩と推薦者の本岡先輩、お願いします”
藤本先輩は唯からマイクを受け取ると、女王様を彷彿させるクールな目で喋り始めた。
「あー、わたしが藤本真姫だ。みんなはわたしの事を『トキコーの女王様』などと呼んでるが、決してそれは間違ってないぞー。それにだなあ・・・」
「藤本真姫さんをよろしくお願いいたします」
藤本先輩は時間の大半を自分で使った。しかも『女王様』を前面に出し、決して笑いを取る事なく、ひたすら女王様らしくクールな口調、クールな笑み、クールな表情で話し続けた。それに本岡先輩も前夜祭の時のように低姿勢で最後に一言だけ喋っただけだから、いかにも女王様の
つまり、今年の三強はそれぞれ独自の方法で差別化して自身をPRしたのだが、特に藍はこの路線が吉と出るのか凶と出るのか、それはこの後の投票結果に委ねる事になる。
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